2.「3姉妹の食事風景」
レム・ミアガラッハ・メイシーです。
このレム家ではふたり目の母親です。
さて、本日は……私は留守番をしていまして。
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――――――ベリアーノ市・レム家屋敷――――――
「そろそろお昼の準備をしなくてはいけませんね……」
時計を見るとお昼が近づいてきていた。
今日は私が子ども達の世話をしながら留守番の日。
アンジェラは学校の仕事に。
夫とリゼットはクエストに出かけている。
私もついて行きたかったのだが誰かは家に残って子ども達の世話をしないといけない。
今日は私がその役になった。
庭を見ると娘達が遊んでいた。
三つ子ではないが同じ日に生まれた姉妹。
うん、みんな元気で何より。
玉ねぎ、キノコ、ニンジン、スピリットリーフ、ハムなどを炒める。
そして、焼いた卵に乗せて半月状に折りたたむ。
最後に少し甘めのソースをかける。これで卵料理『クロワッツ』が完成だ。
夫の故郷である異世界だと『オムレツ』という料理に似ているらしい。
「ケイト、リリィ、アリス!お昼ご飯にしますよ。家の中に入って手を洗いなさーい」
娘達に声をかけると3人は競争する様に家の中に戻ってきた。
仲が良いのは良い事。
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昼食はパン、クロワッツ、そしてスープ。
女神様へのお祈りをした後、食べ始める。
「「「「いただきまーす」」」
3人の娘達はそれぞれ食べ方や好みも違い見ていて楽しい。
長女のケイトは出された食事を少しずつ満遍なく食べ進めていく。
好き嫌いも特にない。
母親のアンジェラは割と好き嫌いが激しいのとは対照的だ。
どうも見ていると自分がお姉さんだという自覚からこういう食べ方になった様子だ。
三女のアリスは一点集中で食べる。
クロワッツを食べ始めたらクロワッツ。
パンならパンを食べ、無くなったら次のメニューへ移る。
時々それで色々と食べにくくなって困り果てていることもあるが放っていたら全部食べている。
そして次女であり私が産んだリリィだ。
ケイトと同じく少しずつ食べ進めていく子なのだが……
「リリィ、スピリットリーフを脇に避けていますけど?」
「うっ……」
この子は嫌いなものを避ける。
スピリットリーフは少しだが苦みのある野菜。
私も小さい頃は苦手だった。
それでも栄養は高いのでこうやって食事に取り入れている。
リリィは視線が泳ぎ、しばらくしてバツが悪そうな表情をしてうつむく。
これに対し私は特に何も言わない。
私は好き嫌い自体否定しない。
それもまた成長に必要な事だし無理強いする事でごはんを嫌いにならないで欲しい。
リリィは今、葛藤している。
スピリットリーフは苦手だ。
だが同時にご飯を残すことは女神様の教えに背くことになる。
さあ、どうするかな?
「あ、お姉ちゃんスピリットリーフ残してる。ボクが少し食べてあげるね」
「い、いいの?」
横からアリスが手を伸ばしスピリットリーフを少し自分の皿へ。
「仕方ないわね。あたしも少し食べてあげるから残ったのはあんたが食べなさいよ」
アリスの行動を見てケイトも自分の皿へスピリットリーフを取る。
ふたりに助けてもらったからには……とリリィは思い切って苦手な野菜を口に放り込む。
苦みに耐える表情がまた可愛らしい。
ああ、こういうのもいいもの。
「3人姉妹で本当に良かったですね……」
私はそう呟き川らしい愛娘たちを見守るのだった。
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その日の夕食。
家族7人で食事をしている中、アンジェラの皿を見ると……
「アンジェラ、ニンジンのソテーですが……良かったら食べてあげましょうか?」
「え?メイシーったらどうしたの?普段は『子ども達に悪影響だから食べないと』とか言うくせに……」
「ふふっ、だって私の方がお姉さんですから」
「ま、またそうやってお姉さん面する!子ども達が見てるんだから恥ずかしいじゃない」
「なんか久々に見たな、メイのお姉さん面」
夫が呆れた顔でニンジンを食べている。
「だね。普段はメイシーの方が子どもっぽいのに……」
アリスの母親、リゼットも何か言っている気がするが気にしない。
だって私、年上ですから。
お姉さんですからね!!
子ども達もその光景を見て笑っている。
うん、何て幸せな光景でしょう。