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プロローグ

異世界転生を知っているだろうか。まぁ簡単に説明すると、突然トラックに轢かれたり病死したり自殺したりなんやかんやあって死んだ後、前世の記憶を持ったまま「あれ!?ここって異世界!?ほえ〜!?」だかなんだか言いながら超強力な魔力で無双したりお姫様としてちやほやされたりするやつである。何故かは知らんが最近爆流行りしているアレだ。

俺はアレがそこそこ好きだった。男の子として生まれたからにはモテたい。とにかくモテたい。そして楽して強者になりたい…!人間の願望なんて皮を剥けば中身は全部こんなもんである。だから異世界転生だなんてバカな題材がやたらとバズるのだ。


そして、突然だが俺は昨日死んだ。

死因は事故死。青信号を正しく渡ってたら突然謎のダンプに吹っ飛ばされたのだ。いや、そこはトラックじゃないんかいと思うがそんな細かいことはどうだっていい。

もうここまで来れば察しのいいなろう小説愛読家の皆はお気づきだろう。そう、この俺大場幹雄もこの度めでたく異世界デビューを果たした。いや〜、死んだかいがあったってものだ。


「お前のような下品で欲にまみれた女など、国母にふさわしい訳が無い!この場を持って私、ドドンパ・ズンドコは公爵令嬢リーシェ・コルンディスに婚約破棄を言い渡し、この子爵令嬢アメリ・フィルトンと結婚する!」

もちろん、こんな場面じゃなければの話だが。


(てか作者王子の名前に手、抜きすぎだろ。もはや王族の名前全員気になるわ)

本気でどうすればいいのか分からずもはや全然関係ないことを考えてしまう。俺が読んでいたのは無双系ばっかりだったのだ。乙女向けなど俺の範疇にかすりもしない。

たださすがに状況はわかる。悪役令嬢が婚約者の王子に公の場で婚約破棄を言い渡されている…せっかく与えられた役柄だ。どうせならノリノリでやりたいのだが、いかんせん元が男のため気乗りしない。

まじか〜え?悪役令嬢…?本気で?

転生する時にミスがあったとしか思えない配役である。元32歳にはいささかキツい。しかしもうこの場にいる以上やるしかないのだ。

今はまだ婚約破棄を言い渡されてショックを受けていると思われてるので誤魔化せているが、そろそろなにか行動しないとさすがにマズイ。

ここで重要になってくるのが主役は誰か?ということである。もし相手の子爵令嬢さんの方なら、俺は悔しがる的なことをすればいいのだ。多分。そっちの方が物語的に盛り上がるし。

逆に俺が主人公の場合。多分不敵に笑ったりすればいいのである。…いや知らんけど。主人公ってだいたい不敵に笑うし。

さて、どっちだ…?俺と、相手方。普通にほかのやつという選択肢も無くはないが今この状況で最も有力なのはこの2人だと思う。伊達になろう読んでねーんだよこっちも。


「どうした。お前の悪行のせいで結果的に己の首を絞めるとは考え至らなかったのか?本当に救いようのない、哀れな女だな…家と顔しか取り柄がないとは」

割と真剣にどちらか考えていると、痺れを切らした王子が話しかけてきた。

これはまずい。早急になにかいい感じのアクションをしなければ。

とりあえずまだどっちつかずな感じで行きたい。まだ様子見したい死にたくない!

(そうだ、公の場!)

ここはよくわからんだだっ広いダンスホールのド真ん中。今にも落ちてきそうなイカついシャンデレラの真下である。

(とりあえず2人は無視して周りに挨拶!そして反応を見る!これだ!)

もし近くに明らかに味方そうなやつがいれば俺が主人公、なんもなしに普通に嫌われてたら相手方が主人公!天才か、俺!

(そうとなれば!)

思い立ったら即行動。王子には目もくれず華麗なターンを決め、周りを見渡す。そして…

(ん?)

まさか…

(礼儀作法的なやつ、なんもわかんね〜)

こんな公の場で礼儀作法ひとつ出来ない公爵令嬢なんて本気でヤバい。今後どうなるかもわからんのにこんなとこで評価を落とすのか…!?こんなことなら淑女の簡単マナー講座を1つでも見ておけばよかった。

(と、とりあえずなんか言わんと…えっと…えっと…!)


「お、お騒がせしてすんません…はは…」


(死んだな。)

やべ〜やっちまった爆笑〜!

だってわかんねぇし!俺一生平社員だったし!

知らねぇよんなもんチクショ〜!!!!!

ああほら、明らかに周りがザワザワしてきた…悔しい。なんなんだ俺は…ただ異世界に来たオッサンじゃねぇか!いやそうなんだけど!

もういっそこのまま帰ってしまおうかと考えていると、王子の「おい」という声が聞こえる。まぁ俺だわな。この状況で呼ぶべきやつ、俺以外いねぇもんな。

「はい…」

観念して振り返ると、何故かさっきまで自信満々に立っていた横の子爵令嬢が青ざめた顔で床にへたり込んでいる。


いやそうはならんやろ。


「リーシェ」

「あっはい…あの、横の人倒れてますけど」

「フッ」

なぜ笑う。面白いとこなかっただろ今。

「私はお前のことを勘違いしていたようだな」

「え、そうっすかね…」

正解である。というか、中の人が違うのだから勘違いレベルの話ではない。しかしこれに気づくなんて、王子はそこまで馬鹿ではないらしい。


「おもしれー女」


「え?」

「おもしれー女と言ったのだ」

ドクン、と心臓が強く体に響く。

嘘だろ…。

俺の頭の中に嫌な可能性がひとつ浮かぶ。ネット民なら誰でも知っている『おもしれー女』

基本的にネタ用語だが、元の意味は『少女漫画のヒーローが、ヒロインの予想していなかった行動に惹かれ興味を持つ』的な意味なのだ。

まずい。これはまずい。

「公爵令嬢リーシェ・コルンディス。先程の婚約破棄は訂正しよう」

何とか修正したいがもう間に合わない。嫌だ!まさかこんなに早くルート分岐があるなんて分かるわけないだろ!


「俺の嫁になれ、リーシェ」

こんな雑な名前の王子と恋愛するなんて絶対に嫌だーーーーー!!!!!

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