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アナザーワールドシェフ  作者: しゃむしぇる
第一章 龍の料理人
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第七十四話

七十四話~切りがよかったので少し短いです。

 朝から一騒動あったものの、何とかエルフの国へと行くための準備を整え、あとは出発するのみとなった。……のだが、そこでまたひと悶着起こることになった。


「私もエルフの国……行きたい。」


「なんと!?」


 マームの言葉にカミルはひどく驚いた様子を見せた。それもそのはずで、エルフの邦衛の入国許可証は私とカミルとヴェルの三人分しかないからだ。


「だめ?」


 少し悲しそうな表情を浮かべながらマームは首をかしげる。そしてカミルは苦悶の表情を浮かべた。


「むむむむむ……そっちの獣人の娘っ子は戦力外じゃから良いとしてじゃな。マーム、お主はな~……。」


「ちょっと、あれよね……戦力になりすぎるわよね。」


「絶対何もしないっ!!だから一緒に連れってって?お願い!」


 悩む二人にマームは必死に頼み込む。それにしてもいったいなぜこんなに急についてきたくなったのだろうか?ふと疑問に思った私はマームに問いかけてみることにした。


「ちなみに何でマームはそんなに着いてきたいんだ?」


「一人はさみしい。だから一緒に行きたい。」


「なるほどな。」


 おそらく私たちが魔王の城に行ったとき一人でここに取り残されたから、その時にさみしさというものを味わってしまったんだろう。


「……まぁ、マーム自身何もしないって言ってるんだし。その言葉が本当に守れるんだったら連れて行ってもいいと私は思うけどな。」


 私がマームの肩を持つような発言をすると、カミルは更に顔をしかめ悩み始める。そしてそんなカミルをマームは無言でじっ……と見つめていた。


 思い悩んだ末カミルは、ある決断を下す。


「はぁ、わかった。わかったのじゃ。お主も一緒に連れて行ってやる。」


「ほんと?」


「ただし!!絶対に妾の言うことには従ってもらう。そして勝手な行動も厳禁じゃ!!」


 まぁ、それが一番無難な条件だな。カミル側が譲歩している以上マームはこの条件を飲まないといけないが……。


「それだけでいいの?わかった。約束する。」


 あっさりとマームは、カミルが提示した条件を飲み込んだ。


「うえっ!?か、カミル本当にいいの!?」


「仕方あるまい?仮にもし妾が断ったとしても……無理矢理着いてくるのじゃろ?」


 カミルの言葉にマームは無言でうなずいた。


「それよりもこうして条件を飲ませて、あらかじめ行動を制限させて着いてこさせた方が最も妾達にとっても安全じゃ。」


「う~ん、そう……なのかしら?」


 いまひとつ納得できないような感じでヴェルは首をかしげた。


「……ま、なんとかなるじゃろ。妾達を呼び出したのはあっちじゃし、何人か従者が着いてくる事ぐらい了承してくれるはずじゃ。」


「そうかも……ね。」


「うむ、さて……ではそろそろ行くのじゃ。腹が背中とくっつく前に帰って来れれば良いがのぉ~。」


 一連の話に区切りが着いたところでいよいよ私達はエルフの国へと向かったのだった。











「お、見えてきたな。あそこがエルフの森だろ?」


「その通り。ミノルもこの世界の地理を少しずつ覚えてきたようじゃな。」


「一回行ってるし、それに特徴的な……世界樹?だったっけ?それもあそこに生えてるからな。」


 エルフの森の中心には、相変わらずとんでもないぐらい大きい世界樹がそびえ立っている。カミルの話ではあの頃根本にエルフの国があるらしいが……。


 そしてカミルは私を抱えたまま、エルフの森の目の前に降り立った。カミルに続き、ヴェルとマームも降り立つ。


「入国許可証があるのに、直接エルフの国に行かないんだな?」


「うむ、あのままエルフの森の上を通ったら下から弓を射られるやもしれん。」


 おぅ……それは勘弁願いたいな。


「入国許可証を持ってるってのに……ずいぶんな事をするんだな。」


「エルフは警戒心が強く好戦的な奴らばっかりじゃ。特にこの森を守っておる近衛の奴らはな。」


「そうなのか。……ん?」


 カミルとそんなことを話していると、森の方から弓を背中に背負った女性が此方へと向かって歩いてきた。その女性は一見外見的にはかなり人間に近いが、耳が異様に長く尖っている。どうやら彼女がエルフ……という種族のようだ。


 こちらに近づいてきたそのエルフの女性は、ある程度の距離まで近付くと私達に声をかけてきた。


「妖精王からお話は伺ってます。カミル殿にヴェル殿、そして従者の方々……。皆様がいらっしゃったら世界樹まで案内するよう仰せつかっておりました。一応入国許可証を見せていただいてもよろしいですか?」


「うむ、これじゃ。」


 カミルは私とヴェルの分の入国許可証も含めて、彼女に提示した。彼女はそれらに目を通して大きく頷くと、再び私達に向き直った。


「確認しました。それでは参りましょう。私に着いてきてください。」


 エルフの女性は私達を導くように先導して歩き始めた。


「さ、あやつに着いていくぞ。」


「わかった。」


 エルフの女性の後を私達はひたすらに着いていく。そしてしばらく森の中を進み、世界樹の根本が近くなってくると……私達の前にエルフ達が暮らす街並みが現れた。


「着きましたよ。改めて、ようこそ……私達エルフの国へ。」


 

それではまた明日のこの時間にお会いしましょ~

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