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アナザーワールドシェフ  作者: しゃむしぇる
最終章 誰の手に……
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第百九十八話

百九十八話~最終章です。

 あの日から数日経った……。アベル達が私を取り合って何かの勝負をし始めてからというものの、私の私生活にある変化が現れ始めた。


「ミノル、朝だよ?起きて~。」


「んん……。」


 ユサユサと優しく体を揺すぶられ、目を覚ますと私のとなりにはノノではなく、アベルの姿があった。


 というのも、どうやら彼女達の間で就寝の際は交代交代で毎日入れ替わろうと約束が交わされたらしいのだ。そして昨日はアベルの番だったのだ。

 

「あはっ♪おはよー。」


「ん、おはよう…………。ふぁ…………。」


 挨拶をかわすと、あくびが込み上げてきた。そんな私を見てアベルは首をかしげる。


「あれ?なんかちょっと眠そう……もしかして寝不足?」


「いや、大丈夫だ。」


 と、アベルには言っているが……実は数日前から寝不足だ。というのも、毎日毎日代わる代わる女性と夜を共にしているのだ。普通に寝られるわけがない。


 眠い気持ちをぐっと堪えて、身支度を整えていると……。


「ミノルーーー!!朝ごはんじゃぞ~!!」


 バン!!と勢いよく扉を開けて部屋の中に踏み入ってきたのは、エプロンを身に纏ったカミルだ。

 彼女はあの日からアベル達に負けじと熱心に料理を学び始めたのだ。最初の頃はホントに……ホントに目が当てられなかったが、今となっては軽い朝食位なら作れるようになってしまっている。


「ほれほれ、お主のご主人様が丹精込めて作った料理じゃぞ~?遠慮せず食べるとよい。」


「あ、あぁ……ありがとう。」


 カミルから朝食を受けとると、それを食べるためのスプーンやフォークが無いことに気が付いた。


「あっ……とカミル?スプーンは…………」


 そう問いかけようとしたとき、スッと私の前に料理を掬ったスプーンが差し出された。


「くっふふふ、ほれあ~んじゃ。」


「い、いや一人で食べれるから…………」


「まぁまぁそう言うでない。妾がせっかくこうしてやっておるのじゃ~。」


「いやホントに……むぐっ!?」


 一人で食べられる……と拒絶していると、口を開いた刹那にスプーンをそこに突っ込まれてしまった。


 悔しいことに料理の味は良いから文句が言えない。


「むっふっふ、どうじゃ~?」


「んっ、ごくっ……美味しいよ。」


「それはよかったのじゃ~。ほれ、どんどん食べるとよいぞ~?」


 嬉しそうに微笑みながら再び料理を乗せたスプーンを差し出してくるカミル。


 だから一人で食べられるんだがなぁ~……。


「はいそこまで~。」


 パチンとアベルが指を鳴らすと、いつの間にかカミルの手にあったスプーンが私の手の中に移動していた。


「なっ!?何をするのじゃ!!」


「あはっ♪ミノルが困ってたら助けるのがボクの役目だからね~。」


 そして朝からカミルとアベルの間でバチバチと火花が散り始める。日によって面子は異なるが、これもここ最近よく見る光景だ。


「くっ、明日は予備の食器を用意しておかねばならんな。」


「あはっ♪明日はボクがミノルにご飯作るも~ん!!」


「ぐぬぬぬぬ…………。」


「ふ、二人ともちょっと落ち着い…………てっ!?」


 二人のことをなだめようとすると、ぐいっと服を引っ張られ、部屋の外へと連れ出される。


「えへへ、お師様おはようございます!!カミル様達に絡まれて大変でしたね。」


「あ、あぁノノか。おはよう……。」


「お師様、ノノまた新しいお菓子作ったんです!!味見してもらえませんか?」


 そういう風に頼まれると断れないんだよな。ノノもノノで私が断れないところを上手く突いてくるな。


「あぁ、行こう。」


「えへへ♪ありがとうございます!!」


 そしてノノに連れられて厨房へと向かうと、バターが焼ける香ばしい匂いが鼻腔をついた。

 中に入ると…………。


「ん……?ミノル?ノノ?」


 そこには頬いっぱいにお菓子を詰め込み食べているマームがいた。それを見たノノは思わず絶叫する。


「ああぁぁぁっ!!マームちゃん!?」


「ノノ、今日もお菓子美味しいよ?」


 美味しいと感想を述べながらマームは並べられたお菓子をあっという間に平らげてしまった。

 

「あぅ~…………。失敗なのです~。」


「???失敗……じゃない……よ?ちゃんと美味しかった。」


 ガックリと膝をついたノノをマームはなだめる。その光景に思わず苦笑いを浮かべていると……。


「あっ!!やっと見つけましたミノルさん!!」


 そう声をかけてきたのはノアだった。そして彼女はこちらに近づいてくる。


「おはようございますっ。今日もいい天気ですね?」


「あ、あぁ……そうだな。」


「こんな日はお外に出掛けないと損です!!と、いうわけで~……一緒にお買い物に行きましょう!!」


「え、あ……ちょっ!!」


 半ば強引に手を引かれ、中庭へとやって来ると、彼女はピッピに声をかけた。


「ピッピちゃん、今日もお願いね?」


「ピッ!!」


「へっ?」


 すっかりノアに手懐けられたピッピは、私のことをくちばしで持ち上げ背中に乗せる。すると私の後ろにノアが飛び乗った。


「それじゃ行きますよ~!!」


「ピィ~!!」


 ノアの声がかかると、ピッピは私達を乗せたまま遥か上空へと飛び上がっていった。



 一方その頃……


「むっ!?ミノルの気配がどんどん離れていくのじゃ!?」


「えっ!?~~~っまさかノアに先越されちゃった!?」


「こうしてはおれん妾もすぐに後を追いかけねば!!」


 すぐに中庭に向かい飛び立とうとしたカミルだったが、龍へと姿を変えたとき、何者かにぎゅっと尻尾を握られる。


「むおっ!?な、なんじゃぁ!?」


「……カミル様、ノノも連れていってくれますよね?」


「むぐぐぐ……仕方ないここは一時休戦じゃ!!」


 時間をとられることを嫌ったカミルはノノを抱えてすぐさま飛び立つ。


「む~っ!!皆して~も~っ!!」


 おいてけぼりを食らったことで、頬をぷっくりと膨らませながらも、アベルはノアの気配を探った。


「…………はっは~ん。なるほどね。」


 ノアの行動を読んだアベルは空間を切り開くとその中へと消えていった。


 ミノルの慌ただしい一日はまだ始まったばかりだ。

それではまた明日のこの時間にお会いしましょ~

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