表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アナザーワールドシェフ  作者: しゃむしぇる
第三章 魔族と人間と
191/200

第百九十話

百九十話~

 準備を整えて中庭へと向かうと、そこには私達を迎えに来たアベル一行がいた。


「やぁおはようミノル~。」


「ミノルさんおはようございます。」


「おはよう二人とも。」


 私は二人と挨拶を交わした。


「今日はいよいよだね~。さっき伝達の兵士から聞いたけど、暴動とかそういう類いのは一切起きてないっぽいよ。」


「そうか、なら安心して王都攻めができそうだな。」


 今日の最初の関門は突破できたな。昨日までに落とした街の人間たちが、魔族の兵士たちに暴動なんかを起こしていたら今日の王都攻めに支障をきたすところだった。


 次の関門は……常駐する王都騎士たちだ。


「それで、戦力は?」


「う~んと、今回はカミル達三龍と他の街に常駐させた兵士……あとはボクとノア、ゼバス。とまぁそのぐらいかな。」


「ふむ、十分すぎるか。」


「残っている王国騎士の人たちは六人なので……一人が一人を相手すれば足りる計算ですね。」


「むっはっはっは!!生憎少し強い程度の人間に負ける妾ではないのじゃ。」


「私も負ける気がしないわね~。どうせ誰も私についてこれないし~?」


 カミル達の士気も十分だ。


 彼女たちのそんな様子に安心していると、空からアスラが姿を現した。もちろん変化した男性の姿で……。

 にしても……こうして見ると、こんなムキムキの筋肉質な男性に変化しているアスラが性別が雌なんて……誰も思わないよな。


 思わずまじまじと眺めてしまっていると、私の視線に気が付いたアスラがこちらを向いて首を傾げた。


「ん?私の顔に何かついているか?」


「あ、いや……すまない。なんでもないんだ気にしないでくれ。」


「…………??」


 アスラにそう謝ると、カミルがにやにやとしながらこちらに近づいてきた。


「くっふふふ、信じられんかの?」


「あ、あぁ。」


「まぁ、気になるのはわかるが……無駄に詮索しすぎないことじゃな。奴の本来の姿を知った上で遠目で眺めておるのが一番面白いぞ?」


 そう私に忠告すると、彼女は私のもとを去っていった。


 カミルがいつもそう思いながら、アスラの事をみていると思うと……凄い性格の悪さがにじみ出てるな。


 カミルの行動に苦笑いを浮かべていると、集まった私たちにアベルが言った。


「それじゃあみんな、行くよー!!」


 そしてアベルは空間を切り裂いた。彼女に続き、中へと入ると魔族の兵士達が私達を出迎えた。


 その少し先には……見覚えのある大きな城がそびえ立っている。王都のシンボルマークである王城だ。


 兵士達がアベルに向かって跪くと、彼女は彼らに向かって言葉を放った。


「みんな、今日……魔族と人間との争いに終止符を打つよ。二度と争いが起こらない世界のために力を貸して!!」


「「「おぉ~~~っ!!」」」


 アベルの声に兵士達が雄叫びで答える。


「さぁ……行くよ!!」


 アベルが先頭に立ち兵士達を率いて王都へと進軍を開始する。その最後尾に私とカミル達は続いた。


「なぁ、そういえば……こうやって進軍するときってなんでカミル達は一番後ろなんだ?」


 ふと疑問に思ったことを私はカミルに問いかけてみた。


「これは仮にもし後ろから伏兵が襲ってきたときへの対処なのじゃ。先頭は最高戦力である魔王様が……そして後ろは妾のような強い魔族を配置するのじゃ。」


「なるほどな。」


 よく考えられてるな。……こういうのが考えられているということは、過去にそういう事例があったということなんだろうな。


 よく考えられた戦法に感心していると、カミルがひくひくと鼻を動かし始めた。


「…………言ったそばからじゃな。」


 カミルはじろりと道中にあった大人の背丈ほどある草むらを睨み付けると、おもむろにそこに向かって大きな火球を放った。


 その火球が草むらに当たる刹那……何かがガサリとその草むらから飛び出て森の中へと消えた。


「おい、そこの。」


「は、はいっ!!」


 カミルは私達の前方を歩いていた兵士に声をかけた。


「魔王様に伝令じゃ。背後に敵の影あり……迎撃するとな。」


「わ、わかりました!!」


 面倒くさそうにカミルは兵士にそう伝えると、カミルの言葉を聞いた兵士は隊列を離れアベルの方へと走っていった。

 そしてカミルは何者かが逃げ去っていった方向を睨み付ける。


「さて、どこまで逃げられるか……試してやるとしようかのぉ~。」


「私の手はいるか?」


「私も手伝うわよ~?」


「要らん、妾一人で充分じゃ。」


 アスラとヴェルに手助けは要らないと返したカミルは、ぶつぶつと何かを唱えながら手を上に掲げる。

 すると、彼女の周りにいくつもの火の玉が漂い始めた。


「追え。不届き者を地の果てまで……。」


 最後にカミルがそう呟くと、彼女の周りを漂っていた火の玉が森の中へと飛び込んでいった。


「うわ~……可哀想に。絶対逃げられないわよあれ……。」


 ヴェルはカミルが使った魔法を知っているようで哀れんだような表情を浮かべた。


「さ、ちと足止めを食ったが……隊に合流するのじゃ。」


 そして何事もなかったように私達は隊列に戻った。カミルが放った魔法がなんなのかを知らないまま……。

それではまた明日のこの時間にお会いしましょ~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ