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アナザーワールドシェフ  作者: しゃむしぇる
第一章 龍の料理人
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第十八話

十八話目ですね~。

 そしてカミルとともに外へと出るとあるものが私達を待っていた。


「ンモォ~……。」


「ほぉ~?こいつが妾が買った家畜か。なかなか可愛いではないか。」


 カミルが頭を撫でているそれは、鳴き声通り牛のような動物だった。


「その家畜はホルスタンという種類の牛でございます。餌は主に草なので、その辺の雑草を食べさせておけば良いかと。」


 私達を見送るために後ろをついてきていた、商人の男がこの牛の説明をしてくれた。


「寿命はどれぐらいだ?」


「寿命は魔物などに襲われず健康に過ごせば、50年ほどと言われておりますね。」


 50年も生きるのか。普通の牛は20年ぐらいまでしか生きられないはず……それを考えればすごい長生きだ。

 

「なるほど……な。」


 さて、この子にもインベントリに入っててもらおうかな。流石にこの子を連れて街中を歩くのは面倒だ。

 先ほど同様にインベントリを開き、その画面にホルスタンを近付けると一瞬で吸い込まれてしまった。そして画面にデフォルメされた牛の画像が追加される。


「これで良し。それじゃまたいつか来るよ。」


「是非お待ちしております。」


 商人の男に別れを告げた後、カミルとともに再び街中へと歩きだした。

 そして歩いている最中……カミルが目を輝かせながらこちらを向いて話しかけてきた。


「のぉ!!ミノルッ!!」


「ん?な、なんだ?」


「妾は今日菓子が食べたいぞ?」


「今日……か。わかった、簡単なもので良かったら作る。」


「おぉ!!誠か!?たのしみじゃあ~。」


 ルンルンと上機嫌な様子でカミルは私の前をスキップしながら進む。相変わらず道端では魔族の人たちがカミルに向かってひれ伏しているという異様な光景だが……そんな事お構いなしとばかりにカミルは突き進み、再びある店の前で歩みを止めた。


「さっきあやつが看板に紋章があると言っておったな。」


「あぁ、そうだな。」


「それはここのことではないかのぉ~?」


 そう言ってカミルが指さした先にあった看板には、さっきのライネル商会の看板にもあった紋章が描かれていた。そして店頭にはたくさんの野菜が並べられている。

 どうやらさっきの商会の息がかかっている八百屋で間違いなさそうだ。そういうことであれば言伝が来ているはず……だが。


 店の奥をのぞき込んでいると、奥からバタバタと焦っているような様子の足音がこちらに近づいてきた。


「はっ……はっ……お待たせしました!!会長から言伝は預かっております。」


「ではもちろん最高の物を準備してくれておるのじゃろうな?」


「もちろんです。ご用意できる限りで最高の物を揃えさせていただきました。こちらをご覧ください。」


 八百屋の店主は大きな木箱を軽々と持ち上げて私たちの前に置いた。その中には色とりどりの野菜や果実が入っている。


「どれもこれも今朝とれたばかりの新鮮なものでございます。」


「ふむ……。」


 一つ葉野菜のようなものを手に取ってみると、ずっしりと重量感がある。それに朝露だろうか、ぽつぽつと水がついている。切断面を見てみると、切断面からも水分が出ていることを見るに彼の言う通り今朝とれたもので間違いないだろう。


「これ全部でいくらだ?」


「全部できっかり金貨5枚ですね。」


 金貨5枚……か。えっとインベントリからさっきの金貨が入った袋を取り出して、この中から5枚っと。


「これでいいか?」


「はい確かに金貨5枚いただきました。……ほかに何か入り用の物はございませんか?」


「いや、これだけあれば十分だ。しばらくは持つ。」


 インベントリにたくさん野菜が入った木箱を仕舞う。これで当面野菜に困ることはないだろう。


「もう良いのか?」


「あぁ、十分だ。次に行こう。……あぁ、そうだ肉屋ってこの近くにあるのか?」


「肉屋でしたらこの通りの突き当りにございますよ」


「そうか、ありがとう。」


 肉屋の場所も聞くことができたので、八百屋の店主に礼を言って私とカミルは店を後にする。そして少し歩いているとカミルが問いかけてきた。


「時にミノルよ、今日は魚屋は良いのか?」


「魚屋は別にいいかな。だってここ……近くに海や川がないし、こんな陸に面した街で揃えられてる魚なんてたかが知れてる。」


「む、そうか。」


「魚を買いたいときはやっぱり海街とかまで出向いて新鮮なものを買いたいからな。」


「では次は海街にでも赴くとするか?」


「ま、カミルが魚を食べたくなったら行けばいいさ。」


 基本私はカミルが食べたいものに応じて料理を作る。カミルが肉を食べたいと言ったら肉料理を作るし、魚を食べたいと言ったら魚料理を作る。


「ふむ、まぁそうじゃな。っと……どうやらあそこが肉屋のようじゃぞ?」


 カミルが指さした先には、先ほどの八百屋と同様に看板に例の紋章が書いてあった。もう着いてしまったか……と思っていると、前からすごい勢いでこちらに走ってくる人影が見えた。


「お、お待ちしましたぁ~っ!!カミル様とその従者の方っ!!私っあそこの肉屋の店主のシーラって言いますっ!!」


「お、おう……ここまで出迎えに来るとはなかなか律儀な奴じゃな。」


 わざわざここまで走って出迎えに来てくれたシーラという名の女性はどうやら向かっていた肉屋の店主らしい。

 あのカミルが彼女の勢いに圧倒されて少したじろいでいる。


「ちょうど今日めっずらしいお肉を仕入れてました~!!ぜひ見てってくださいっ。さぁさぁっこちらですっ!!」


 勢いに押されるがまま、私とカミルは彼女が営む肉屋へといざなわれていった。

それではまた明日のこの時間にお会いしましょ~

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