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アナザーワールドシェフ  作者: しゃむしぇる
第三章 魔族と人間と
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第百八十八話

百八十八話~


「まず第一にツガイ……というのはじゃな。雌の龍の伴侶となる者のことじゃ。」


 カミルはポツポツとツガイというものについて話し始める。


「普通であれば……同じ種族同士で子を成すのじゃが。妾のような位の高い龍になると少しそれが変わってくるのじゃ。」


「ふむ。」


「昔からのしきたりで……強い力を持つ龍は後世に優秀な子を残さねばならん。じゃから普通は自分よりも強い龍とツガイとなるのが一般的じゃ。」


 なるほど?つまるところ、カミルは今……自分よりも強い龍を探している……ということなのか?

 カミルの説明を聞きながら、そう予想していると。


「しかし……じゃ、あいにく現世には妾よりも強い雄の龍などは居らん。」


「アスラはどうなんだ?」


 アスラだったら三龍の中に入ってるトップクラスに強い龍のはずなんだが……。


「……あやつはあぁ見えて雌なんじゃぞ?」


「…………!?」


 いやいやいや……待てよ?だって……人の姿に化けたら完全にムキムキのおっさ…………ゴホン、筋肉質な男性だったぞ?


「前……人に化けてる姿を見たんだが、あれは……」


「あの姿はアスラ曰く自分が人の形になった時の理想の姿……らしいぞ?詳しいことは妾も知らんが……。」


 開いた口が塞がらないというのは正にこの事だろう。アスラがまさかの雌である……という事実と共に、私はカミルが言わんとする事を少し理解できたような気がした。


「……それじゃあつまり、今の三龍の中ではカミルのツガイとなるに相応しい雄がいない……と?」


「ん、まぁつまりそういうことじゃ。」


 ふむふむ、なるほどな。ようやくわかった。……だが待てよ?このツガイってものの話と、私はいったいなんの関係がある?


 私は龍ではないし……。いや、待てよ?カミルとヴェルの血を取り込んでいるから龍に近い存在になってるのか?

 ……それでもカミルやヴェルには全く力で敵わないし、カミルがさっき言っていたことを聞くに私にもツガイとなる資格は無いはずなんだがな。


「それで……私とツガイにはいったいどんな関係がある?」


「言ったじゃろ?妾達のような龍は優秀な子を成さねばならん……と。」


 カミルは湯船から立ち上がると、私の目の前に歩いてきて座り、じっと私の目を覗き込みながら言った。


「……ミノル、妾のツガイになれ。」


「………!?」


 カミルの言葉に私は思わず耳を疑った。


「妾はお主ほど優秀な者を見たことはない。きっと……お主と妾の子であれば強く優秀な龍になろう。それに…………。」


 少しずつ私の方に近寄ってきたカミル。そして私が少しでも動けば、唇が触れてしまうような距離まで彼女は近寄ってきた。


「妾はお主の事が好きじゃ。好きで……好きで……好きすぎて、絶対に手放しとうない。じゃから、妾とツガイになって……生涯付き添ってはくれぬか?」


「………………。」


「のぉ、どうじゃ?…………む?ミノル?」


 答えが返ってこないミノルの様子に違和感を覚えたカミルは、よ~く彼の顔を観察してみた。

 彼の顔は真っ赤に染まり、目の焦点が合っていない。


 実はこの時……カミルの気持ちに反応した炎の力がお湯の温度を沸騰直前まで上げていた。

 それによってミノルは完全に逆上せてしまっていたのである。


「み、ミノルや!?だ、大丈夫かの!?」


 カミルは急いでミノルのことを抱き抱え、湯船から引き上げた。


「あわわわ……ど、どうすればよいのじゃ~!?」


 ミノルの一大事にカミルはあわてふためく。しかし、ミノルの顔を見た彼女は冷静さを取り戻した。


「……慌ててどうするのじゃ!!このバカ者!!」


 パチン!!と両手で自分の頬をはたき、カミルは冷静に対処し始めた。

 手をミノルの額に当てると、明らかに平均的な体温を超えていることがわかった。


「……体温が高い。これが逆上せる……というものの原因じゃな。ならば体を冷やして体温を戻してやれば良い。」


 カミルは走って浴室を後にすると、冷たい水をたっぷりと吸わせた布を何枚も持ってきた。

 そしてそれをミノルの額に乗せる。


 すると、彼の表情が少し和らいだ。


「あとはこれで様子見……かのぉ。」


 ミノルの頭を固い床ではなく、自身の膝の上に乗せた。そして意識の無い彼に語り始める。


「ミノル。お主がどこまで話を聞けていたかはわからぬが……これから先も妾のこの気持ちが変わることはない。妾以外の誰にもお主は渡さん。」


 常温に戻った布を新しい物に取り替えながら続ける。


「たとえ……魔王様や勇者がお主を欲したとしても、必ず……必ずお主を手に入れてみせる。」


 意識の無い彼に語りかけながら、カミルは彼の介抱を続けたのだった。

それではまた明日のこの時間にお会いしましょ~

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