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アナザーワールドシェフ  作者: しゃむしぇる
第三章 魔族と人間と
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第百八十一話

百八十一話~

 兵士達の態勢を整え終え、いよいよ次の街へと赴こうとした時……事件が起きた。


「ん?雨……か。」


 今の今まで快晴だったというのに、突然土砂降りの雨が降り始めた。

 挙げ句の果てには私達の上空で雷雲が渦を巻いている。


 私から見れば……ただの積乱雲のようにも見えるが、アベル達は何かを感じとり、その雷雲の中をじっと見つめていた。

 そして、次の瞬間……私達の目の前に大きな落雷が堕ちてきた。


「ッ!!」


 轟音とまばゆい光に晒された私は思わず目をつぶる。すると、何かに持ち上げられたような感覚に襲われた。

 未だチカチカとしている目を開けると、カミルが私とノノの事を雷から遠くの方へと運んでくれていた。


「カミル?」


「ミノル、ノノ、離れておれ。どうやらちと厄介なことになりそうじゃ。」


「……?」


 カミルの言葉の意味がわからずにいると、堕ちた雷から発生した黒煙の中から2体の龍が姿を現した。


「なっ!?ウルとボルト!?」


 そう、黒煙の中から現れたのは、シグルドさんに封印されたはずの水龍のウルと雷龍のボルトだった。


 いったい……なぜ彼等がここに?

 疑問に思っていると、アベルがウルとボルトの方へと歩みを進めた。


「……何で君達がここにいるのかな?」


「はんッ!!素直に答えると思ってんのか?あ?」


 怒り心頭といった様子のボルトは素直にアベルの問いかけに答えようとはしない。


「まぁなんとな~く想像はつくからいいけど……ボクの前に立ちふさがるってことはそういうことでいいんだよね?」


「もちろんだ。俺らはてめぇらのくだらねぇ理想ってやつをぶっ壊しに来た。」


「ちょうどあそこにあっさり死んじゃう雑魚どもが集まってるし……ねっ!!」


 彼らは狙いを街の方に定めると、街に向かってブレスを吐いた。水と雷のブレスが街に向かって放たれた瞬間、街の周りの大地が壁を作るように盛り上がり彼らのブレスから街を守った。


「っ!!アスラァ~……てめぇまでくだらねぇ理想に付き合うつもりか?」


「生憎だなボルトにウル。私は魔王様の忠実な配下である。いついかなる時でも魔王様の命に従う。」


「ふんっ!!意味無いよボルト、あんな堅物に何言ったって無駄無駄。」


 そして街へとブレスを放った二人にアベルがゆっくりと近づいていく。


「さて……本当はやりたくなかったけど、飼い主に牙を向ける悪~い子には()()()()……しないとね?」


「~~~ッ!!」


 アベルがそう言った瞬間に、背筋にゾクゾクと冷たいものが走った。それは私だけではなく、カミルやヴェル達でさえ感じたようだ。


「アスラ。」


「はい、ただいま……。」


 アベルがアスラの名を呼ぶと、彼は何をすればいいのかわかっていたようで、すぐにアベルとウルとボルトを覆うようにドーム状に土を盛り上げた。


 それを見たカミルは大きなため息を吐きながら、言った。


「あれは終わったのぉ~。」


「んね?御愁傷様って感じ。」


 カミルとヴェルの二人はこれから何が行われるのか知っている様子だ。


「なぁ、これから何が起こるんだ?」


 二人に問いかけると……


「魔王様直々の調()()じゃ。……そろそろ悲鳴が聞こえてくるのではないかの?」


「調教?」


 首をかしげていると……


 ベリベリベリベリィィ~~~!!


「ひゃあぁぁぁっ!!ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい~~~ッ!!」


「ゆ、許し……ぎゃあぁぁぁぁっ!!」


 突然土のドームの中から、許しを乞うウルとボルトの二人の悲鳴と、何かを剥がすようなベリベリという音が辺りに響き始めた。


「どうやら始まったようじゃの~。」


「うぅっ!!寒気がするわ~。」


 中で何が行われているのかわかっている様子の二人は我が身を抱いて震えている。


「このベリベリって音はなんなんだ?」


「もう少ししたらわかるのじゃ。そろそろ剥がし終わる頃じゃろうからのぉ~。」


 剥がし終わる……って、やっぱり何かを剥がしてるのか。……ん?剥がす?剥がすって……もしかして。


 中で何をしているのか大方予想がついたとき。


「いよっ!!」


 バコン!!とアベルが土の壁を蹴り破って外へと出てきた。その表情はどこかスッキリしたような感じだ。


「アベル?ウルとボルトは……。」


「バッチリ!!もう二度と逆らわないって約束させたから、もう大丈夫~。」


 ルンルンと鼻唄を口ずさみながら戻ってきたアベルの後ろで、ガラガラと音をたてて崩れ去る。

 その中では、青色と黄色の鱗が積み重なり山になっていた。その隣で、しくしくと肌色になったウルとボルトの二匹が各々の鱗の山を抱きしめて泣いていた。


 …………心中お察し申し上げる。でもまぁ……自業自得だな。

それではまた明日のこの時間にお会いしましょ~

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