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アナザーワールドシェフ  作者: しゃむしぇる
第三章 魔族と人間と
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第百七十六話

昨日は投稿できずすみません……

百七十六話です。

 王国騎士達の剣とノアとゼバスの剣が激しくぶつかり合う音が場を支配する。

 しかし、徐々にこの勝負の行方が垣間見え始めた。


 王国騎士二人の剣撃をひたすらに受け続けていたノアは、二人の剣を大きく弾き飛ばし、仰け反る二人に問いかけた。


「国王がいない今……あなた達が守るものはなんですか?」


「「っ!!」」


「答えられませんか?」


 これまで防戦一方だったノアが、今度は自分から二人に向かっていった。

 すると、一気に形勢が逆転し、今度は彼等が防戦一方となった。


「無意味な戦いをするためにあなた達はいるのですか?」


「黙れッ!!人間を裏切った貴様が言えた台詞ではないだろう!!」


 無理に反撃しようとした王国騎士の男の剣をノアはあろうことか素手で受け止めた。


「っな!?」


「私は人間を裏切ったりなんてしてません!!」


 そしてノアは剣を受け止めた拳に思いっきり力を込める。すると、ビキビキと音を立てて男が手にしていた剣が砕け散った。


「どけッロイゼ!!」


 自分の剣を砕かれ唖然とするロイゼという王国騎士を女の王国騎士が蹴り飛ばし、ノアに切りかかっていく。

 しかし、二人で相手にならないのであれば一人になって相手になるはずもなく……。


「無駄です。」


 ノアが横一閃に剣を払うと、あっさりと女の王国騎士の剣が真っ二つに切れてしまう。剣をあっさりと真っ二つに切り裂いたノアの剣は煌々と光り輝いている。

 おそらくあれがノア自身の本当の力なのだろう。


「ッ!!」


「あなた達は間違っています。確かに私達は幼いころから魔族は怖いものだ……とか、彼らのそういう悪い印象を植え付けられてきました。でも、今と昔は違うんです。」


 剣を砕かれ、真っ二つに切られ、戦意を喪失しかけている二人の王国騎士にノアは語り掛ける。


「今の彼らは私達と手を取り合おうとしてるんです。昔とは違って……」


「手を取り合う……だと?笑わせるなッ!!あの軍勢はなんなんだ!?敵意がむき出しじゃないか!!」


「確かにそう捉えられてもおかしくはありません。……でも、敵意があるんだったらとっくの昔にこうして語り合うこともせずに街は蹂躙されているのではないでしょうか?」


「くっ……それは………。」


 ノアの言葉に彼らは何も言い返せないでいる。ノアの言葉が間違ってはいないから言い返せないのだ。


 事実……アベルが行けと命令するだけで、この街はあっという間に滅ぼすことができるだろう。なんならカミル一人でも一瞬で終わるかもしれない。


「あなた達がここにいる理由は何ですか?街の人たちを守るためでしょう?なら……今どんな選択をするのが最善かわかっているはずです。仮に……今その答えを選ぶことができないとしても、私達はずっと……ずっとあなた達が決断するのを待っています。私たちが伝えたいのは、それだけです。」


 そうノアが言い終えると同時に、隣で行われていた戦闘も終わりを迎えた。


「むんっ!!」


「おわあぁぁぁぁぁッ!!!!」


 ゼバスが剣の腹で薙ぐようにタイラーという王国騎士を吹き飛ばす。吹き飛ばされたタイラーは街の壁に叩きつけられ、ぐったりと倒れこんでしまう。

 そしてゼバスは大きくため息を吐き出しながらタイラーに向かって言った。


「ふぅ~……まだまだ我輩は尻の青い弟子に負けるわけにはいかぬのだ。」


 ゼバスはノアのもとへとゆったりとした足取りでむかう。


「ノア殿お怪我は?」


「私は大丈夫です。ゼバスさん、タイラーさんは……。」


「はっはっは!!心配には及びませぬ。あれでも我輩の弟子ですからなぁ。」


 ノアに心配いらないと、笑いながら言った彼はノアと戦っていた二人に声をかけた。


「ロイゼにカーラ、お前達に知っておいて欲しいことがある。」


 そう声をかけるとロイゼとカーラと呼ばれた二人は、ゼバスの顔を見上げる。


「魔族の国には今……我ら人間が魔族と共に暮らしている街があるのだ。」


「「……!!」」


 二人はゼバスの言葉に驚いた表情を見せた。


「もう既に、人間と魔族は共存を始めている。それをお前達に知っていてもらいたかった。あそこにいるタイラーのやつにも伝えておいてやってくれ。」


 それだけ伝えると、ゼバスは彼等に背を向けてこちらへと歩いて戻ってきた。

 一方以前、彼等の前に佇んでいるノアは……。


「皆さんが何を守るために存在しているのか……良く考えてみてくださいね。」


 それだけ彼らに言い残すと、踵を返してノアもこちらに戻ってきた。無事に役目を終えたノアにアベルが声をかける。


「お疲れノア~。怪我はない?」


「うん、大丈夫だよ。一応……言える限り言ったつもりだけど、聞き入れてくれるかな?」


 そう不安がるノアにアベルは言った。


「大丈夫だよ~。きっと、ノアの想いは届いてる。まっ、気長に待とうよ~。」


「アベルの言うとおりだ。信じて待つしかないさ。」


 見ていた限り、彼等はきっと無能じゃない。ただ古い教えに惑わされているだけだ。

 今を受け入れることができれば……きっと正しい判断ができるはずだ。


それではまた明日のこの時間にお会いしましょ~

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