第百五十五話
百五十五話~
禁書庫を後にした私は、カミルの城へと戻り、早速文献を見て思い付いた、いくつかの方法を試すことにした。
のだが、早速大きな壁にぶつかってしまう。
「しまった……核は粉々になってたんだったな。」
そう、ホムンクルス達の胸に埋め込まれていた核は、アベルが粉々に破壊してしまっている。
しっかりと散らばった破片を全て回収してきてくれたとはいえ、これを一つ一つジグソーパズルのように復元するのは時間がかかりそうだ。
「溶かしてまた固められれば楽なんだが……。こいつの融点は?」
鑑定……っと。
深く鑑定してみると、驚きの数値が導き出された。
「なっ……融点3000℃!?」
こんなのどうやって融かせってんだ!?
「ちょっとこれは……私の力だけではどうしようもないな。」
私も多少はカミルが扱う炎を扱うことはできるが……とてもじゃないが、こんなに高温にすることはできない。せいぜい、お湯を沸かす位の火を出せるぐらいだ。
「むぅ……どうしたものか。」
バラバラになった破片を見つめて頭を悩ませていると、そこにカミルが通りがかった。
「お?ミノル、何をそんなに悩んでおるのじゃ?」
「ちょうど良いところに……ちょっと相談に乗ってくれ。」
「む?な、なんじゃ?」
カミルに私がさっきまで悩みの種だったことを打ち明けると……。
「なるほどのぉ~。そういうことじゃったか。それは妾にしか解決できなさそうじゃのぉ~。」
にんまりと表情を歪めるとカミルは私の耳元で囁いてくる。
「もちろん、成功報酬はあるのじゃろうな?」
「あぁ、もし融かせたらの話だけどな。」
「むっふっふ~、妾に燃やせぬ物は無いように、融かせぬ物も無いのじゃ!!任せておけ。」
そして自信満々にカミルは破片の山に目を向けると……。
「炎よ……。」
そう呟いた。
すると、破片の中に揺らめく炎が現れみるみるうちに温度が上がっていく。
しかし……。
「…………カミル?」
「んぎぎぎぎっ!!話しかけるでない!!」
まったく融け始めないからゆっくりと暖めているのか聞いてみようとしたところ、鬼の形相でそう注意されてしまう。
集中してるみたいだから少し様子を見てみるか……。
◇
それから一時間後……
「無理じゃ。」
さっきの自信満々の姿とはうって代わり、少し拗ねた表情のカミルはそう言った。
「カミルでも無理……か。」
それならいったいどうやって……シルヴェスターはこいつを加工したんだ?
てかまず、3000℃の融点って時点でだいぶヤバい耐久力なんだよな。
「オリハルコンですら灰にできる妾が……この世に融かせん物質があるとは……。世の中はやはり広いのじゃ。…………はぁ。」
カミルはガックリと項垂れながら大きくため息を吐いた。彼女の言うオリハルコンというものがいったいどんな物なのかはわからないが……とにかくヤバい金属なのだろう。
「融かすということが無理なら……何か別の方法を考えないとな。」
別の方法を……と頭を悩ませていたが、そんな時……ある存在が頭をよぎった。
「そういえば……イフリートって炎を操る精霊がいたよな。」
「四大精霊のことじゃな。言っておくが、あやつでは妾以上の炎を出すことなんぞ無理じゃぞ?」
「それってイフリート単体だったらの話だろ?」
「ん?つまり……何が言いたいのじゃ?」
私の話の意図が掴めずに困惑するカミル。
「つまり……だ。イフリートの力を借りれば、カミルはもっと高温の炎を使えるようになるんじゃないのか?」
「なるほどのぉ~。話はわからんでもない。じゃが試してみたことはないからどうなるかはわからんぞ?第一に、あっちの精霊どもが協力してくれるかさえ……。」
「あぁ、その点については多分大丈夫だ。」
「何か策でもあるのかの?」
「こっちにはノノがいるからな。」
ノノは精霊達に懐かれやすい性質だと前に聞いた。だからノノに交渉をしてもらって……さらに餌で釣る。
お菓子という甘い……甘~い餌でな。
そう頭のなかで作戦を立てていると、隣にいたカミルがぶるるっと背筋を震わせた。
「うぅっ!!相変わらず何かを企てておるときのミノルの笑顔は怖いのじゃ~。もっと優しい笑顔はできんのか?」
「怖いとは人聞きが悪いな。良い笑顔と言ってくれ。」
さて、そうと決まれば……明日にでもエルフの国に足を運んでくるか。カミルとノノを連れて、そしてたくさんお菓子を持って……な。
それではまた明日のこの時間にお会いしましょ~