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平穏な一ヶ月

 誘拐事件を解決してから一ヶ月が経った。

 俺は固有魔法を狙われることもなく、日々を過ごしている。

 固有魔法を発現してからは波乱の日々ばかりだったけれど、学校では友人が出来たし、成績もぐっと伸びた。日常は順調に巡り始めている。

 世間をあれだけ騒がせたアイルも、今や誰も話題にしていない。

 あの日からアイルは世間に姿を見せていないからだ。

 テレビ番組はゴシップや異世界人との摩擦の話題ばかりを取り上げているし、トレンドは完全に別のものへと移っていた。

 でも、それでいい。それがいい。

 そうでなければ一ヶ月もの間、鳴りを潜めていた甲斐がないのだから。


「よう、ツバサ。一ヶ月ぶりだな」


 二階建てのバスからウィルが降りてくる。


「休養はどうだったよ? 楽しかったか?」

「退屈でしようがなかったよ」


 背もたれ越しのヴェインにそう返す。

 俺はこの一ヶ月間、有名になりすぎてしまったアイルを世間から忘れさせるために休んでいたのだ。

 初めは誘拐事件が解決したら辞めようと思っていた。

 けれど、いざ日常に戻ってみると平穏すぎてダメだった。アップグレードした肉体がうずいてしようがない。たぶん、もう普通の日常には戻れない。


「……おかえり、なさい」

「あぁ、ただいま。イナ」


 毎日のように学校で顔を合わせていたイナと、こうしてまともに喋るは久しぶりだ。

 周囲の目を気にせずに会話が出来るというのは、かくも素晴らしいことだった。


「ツバサの復帰祝いだ。なにかパーっと――」


 ウィルは言葉を言い切らなかった。

 途中で無線機から連絡が入ったからだ。


「また誘拐事件ですか?」


 そう戯けて言ってみる。


「はっはー。いや、この一ヶ月で残党は全部、潰してある。別件だよ」


 そうか。それはなによりだ。


「復帰早々悪いが、行けるか?」

「えぇ、もちろん」

「よし。なら、仕事だ。行くぞ、みんな」


 各々が立ち上がり、転移魔法陣へと向かう。

 こうして俺の日々は刺激に満ちた世界へと舞い戻る。

 今度は目立たないように陰のヒーローとして活動するとしよう。

 この仮面をつけて。

書きたいところまで書けたので、この辺で区切りにします。

次はこの作品をベースにして追放物でも書こうかな。

まぁ、ともかくここまでお疲れさまでした。



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