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39.宮本賢治

 宮本はオールドジャイアンツに入って、ピッチャーを志願した。たまたま試合の助っ人で来てもらった他チームのエースピッチャーからピッチングのコツを教わった。その教えを基に時間があれば練習を積んで、めきめきと頭角を現した。奈津美はそんな宮本からピッチングを習った。

 以前、修二も話をしていたが、女性を入れなければならないというPTAルールではしっかり守れる女性が居るチームが有利になる。そんな条件であれば女性がピッチャーだと野手を男性で固められる。経験がない奈津美は野手としては到底男性にはかなわない。ならば、ピッチャーとして試合に出るのが最善だと判断した。そこで、クラブチームでもピッチャをやっている宮本に教えてもらうことにした。

 元々運動神経がいい奈津美は短期間でそこそこのボールを放れるようになっていた。


 チームで元々キャッチャーをやっていたのが根本だった。ところが、対抗戦が間近に迫ったある日、根本の性格的なものが気に入らなかった奈津美は宮下にキャッチャーを変えてもらうように頼んだ。根本は他のポジションでも人並み以上にこなせるのでそれについての問題はなかったし、逆にその方が守備を固めるのには好都合だと判断した宮下は奈津美の提案を受け入れた。

「じゃあ、誰ならいいの?」

「宮本さんにして欲しいです。彼はクラブチームでもピッチャーだし、ピッチャーの気持ちがいちばん解かるので」

「なるほどね。いいんじゃない」

 ここまではよかった。奈津美がピッチャーをやることで他の部員たちも奈津美を盛り立ててチームはまとまったように、この時は宮下にもそう思えた。

 キャッチャーとして宮本が守備のリーダー的な役割を果たすようになると、他の部員たちも彼を信頼するようになった。すると、それからは試合のオーダーや作戦に関しても、宮下に意見するようになってきた。宮下は宮下なりに、これまでの部員の適性を見てオーダーを組んでいたのだけれど、宮本が提案したオーダーは1番に奈津美を据えることだった。確かに奈津美はいいセンスをしている。しかし、非力な分、試合でヒットを打てる可能性はほとんど無いに等しいものだった。



 終わった後のベッドの中で宮本は奈津美から今後のソフト部についてのことを聞かされた。

「私、ピッチャーをやりたいんです」

「いいんじゃないの。PTAは女性がピッチャだと有利だって聞いたことがあるよ。そしたら、俺がキャッチャーをやってやるよ」

「それで、打つのは1番がいいです」

「1番? どうして?」

「だって、いっぱい打順が回って来るでしょう」

「バッティングには自信があるの?」

「ないけど、だから、いっぱい打って上手くなりたいもの」

「なるほど。でも、練習ではいいけど、ちゃんとした大会の試合じゃ、監督さんがそうはさせないんじゃない?」

「監督は辞めちゃったから、今は宮下さんが代行しているけど、彼は前の監督を崇拝しているからきっとそうね」

「じゃあ、ダメじゃん」

「だから、これからは宮本さんにチームを仕切ってもらいたいの」

「そんなこと言ったって、いきなり入部したての俺なんかが口出しできないっしょ」

「出来る様にすればいいのよ」

 そう言って、奈津美は宮本の小さくなったものを刺激して再び膨張させた。それから、宮本の上に跨ると宮本にキスをして、大きくなったそれを迎え入れた。

「うっ…」

 宮本は思わず声を漏らした。

「何が何だかわかんないけど、全部俺に任せとけ!」



 結局、部長という役職を行使した奈津美の判断で、クラブチームにも入っていて経験者の宮本に今後の指揮を任せることになった。半ば強引な決定に宮下は呆れるより失望した。


 対抗戦は盛り上がった。他の部員たちも楽しそうにやっていた。大会の運営に際しては、奈津美がとK二中の中山があれこれ話しながら進めていき、当初の予定とだいぶ変わったものになっていた。それは、もはや、修二たちがやっていて大会とは全く違う種類のものになっていた。そこで宮下はPTAに見切りをつけた。




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