37.宮下和也
修二のもとに宮下から連絡があったのはそれから2か月後だった。対抗戦が無事に行われたと奈津美から報告があった直後だった。
『俺もウィーズに入ります』
メールでそう告げて来た。修二は早速、宮下に会って話を聞くことにした。キャプテンの博仁に利光と孝之も立ち会った。
「PTAで頑張るんじゃなかったのか?」
修二の問いに宮下は苦笑しながら答えた。
「あんなところではやってられませんよ。蒼井さんが部長になってから、PTAは滅茶苦茶です…」
その話を聞いて修二は怪訝な表情を浮かべたが、博仁は「そら見たことか」と言わんばかりに修二の顔を見た。そして、宮下は奈津美が部長になってからのことを話し始めた。
奈津美が中山とホテルに入って行くのを見かけた宮下は二人が出てくるのを待った。二時間ほど経ってから二人が出て来た。一緒に居る男の顔をよく見ると、宮下も知っている顔だった。K地区の第二中学校ソフト部監督の中山だった。
「なんで中山さんと蒼井さんが…」
宮下はすぐに奈津美にメールを送った。
『蒼井さんがK二中の中山さんとホテルから出て来るのを見たんだけど、どういうこと?』
『今、どこに居るんですか?』
すぐに奈津美から返信があった
『そのホテルの前だけど』
『今から戻るので待っていてもらえますか?』
宮下が『待っている』と返信すると、すぐに奈津美が戻ってきた。
「ここでは目立つので中に入りましょう」
奈津美はそう言って宮下と一緒にホテルに入った。
「対抗戦の打合せをしていただけです」
ベッドに腰かけた奈津美はベッドの前で仁王立ちしている宮下にそう答えた。
「打合せするのになんでホテルなんだ?」
「静かなところで話をしたかったので。中山さんとは別に何でもありませんから」
「二人でホテルに入って、何もないなんでことがあるわけないだろう」
「中山さんは桐谷さんに紹介してもらって一度お会いしただけで、そんなに親しいわけではないですよ」
「そんな奴とも簡単に寝るのか?」
「だから、そんなことはしていません」
「俺と寝た時も簡単に寝たじゃないか」
「宮下さんは私、以前から知っていました。ずっと憧れていたので…」
奈津美の言葉を切るように宮下は奈津美をベッドに押し倒した。
「本当に打合せをしただけなのか?」
「だから…」
宮下は奈津美の唇に自分の口を押し付けて奈津美の言葉を遮った。宮下が奈津美から顔を離すと奈津美は宮下を見つめて言った。
「宮下さんとならいいですよ」
そう言って奈津美は目を閉じた。
「ちょっと待て! お前、アオちゃんとやったのか?」
利光が口を挟んだ。博仁と孝之は「やれやれ」という顔をしている。
「はい。その時が二回目です」
「二回もか! お前、アオちゃんが修二の彼女だってことを知ってるのか?」
「えっ?」
宮下は驚いて修二の顔を見た。修二は顔色一つ変えずに答えた。
「別に彼女じゃないよ。だから、俺のことは置いといて話を続けろ。どうしてPTAが滅茶苦茶になったんだ?」
「たぶん、彼女が寝たのは僕だけじゃないですよ」
「マジか?」
利光が驚いた顔で宮下を見た。
「だから、あの子はそういう子なんだって」
博仁が修二に言い聞かせるように言った。そして、宮下は更に話を続けた…。