16.友情! 努力! 欲望! (真)
翌日の朝。
その日は緩やかな風が吹いており、桜の木から綺麗な桃色の雨を降らせていた。
まるで幻想的な光景をバックにして、二人の美少女が立っていた。それはそれは絵になる光景だった。
『一年Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ組 男子一同。
以下の違反行為を働いたため、上記の者たちを七日間の停学処分とする』
「バカですね」
「バカっすね」
唯一残念なのは、彼女たちが訝しげな顔をしているることだろう。
どうやらその表情の理由は、目の前の掲示板にあるらしい。
「まさか作業員たちが取りつけていたものが、監視カメラだったなんて……陸っちたちの行動は全部バレバレだったわけっすね」
「解答を盗んで寮に戻る途中、警備員に取り押さえられたそうです。呆気ない終わり方ですね」
「でも何で監視カメラなんて設置したんすかね?」
「恐らく、本来は生徒同士の喧嘩とかのトラブルをいち早く察知するためのものだと思いますよ。……でもまさか設置日当日に活躍するなんて、誰も思わなかったでしょうね」
「うんうん。……ん? よく見れば盗み以外にも違反行為をしたみたいっすね。……えーと、暴力、不要物の持ち込み、不純性交遊……あれ、最後のなんか文字足りなくないすか?」
「普通は不純『異』性交遊ですよね。……何ででしょう、今日は暖かいはずなのに寒気が……」
「深く考えちゃダメっすよ。忘れるっす」
二人は、その場から歩き出した。
下駄箱に入り、靴を履き替えて教室に向かう。
「凪っち~、教室着いたら勉強見てほしいっすー」
「もちろんいいですよ。……はぁ、彼らは結衣の真面目さを見習ってほしいですね」
「あ、習うといえば……ウチ、陸っちたちから学んだことがあるっすよ」
「えっ、あんな人たちから!? で、でもアレですよね? あまり大したことじゃ……」
「ううん、けっこう大切なことっす」
結衣と呼ばれた女子生徒はそう言うと、ちょうど辿り着いた教室の中を見た。
その瞳には、勉強する女子クラスメイトたちの姿が映っていた。
そして、彼女は口を開いた。
「――ズルはしちゃいけない、ってことを」
その言葉に、凪っちと呼ばれた巨乳女子は少しだけ目を見開いたあと、優しく微笑んだ。
「……ふふ、そうですね。その通りです。それに楽な道を模索するよりも、実は真面目に取り組む方が楽だったりするんですよ」
「! 確かに。やってみれば意外と簡単だったっす。凪っちの教えが上手いってのもあるっすけどね」
「ふふ、褒めても何も出ませんよ?」
二人は微笑み合いながら、教室に足を踏み入れる。
そして自分の席に着くと、すぐに勉強道具を取り出した。
仲間たちと真面目な努力を繰り返して、ノルマを達成するために。
己の欲望を、満たすために。
これにて完結となります。
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