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第3話 七人集結 そしてダンジョンへその4

七人は山羊の憩い亭を出ると、その足で王宮に足を運ぶ。

ダブローノスが門番に話したところ、止められる事もなく、すんなりと入ることが出来た。

しかし、国王ガラヴァーとの謁見が許されたのはプロスヴァーとダブローノスの二人だけだった。

「すまん。すぐ終わると思うからここで待っててくれ」

「あ、私も……」

「すまん。君もここで待っててくれ」

クラヌスにそう言ってプロスヴァーは部屋を後にする。

二人が出て行った後、残った五人は別室で待つ事になった。

特にする事のない五人は、自由に部屋の中で過ごしていた。

「まさかここまで来て陛下に会えないなんて、やっぱり私は子供にしか見えないのかしら? は〜」

「…………」

そう呟きながらクラヌスは椅子に深く腰を下ろし、チャリーノスはクラヌスを守るように彼女の後ろに立っていた。

ヴェシマは鞄から日記と羽根ペンを取り出し、今日の出来事を書いて記録する。

「うめえ! やっぱり王族の方々はいい酒飲んでるなー!」

「声がでかい。みっともないぞ」

ソンツェルは出された酒を飲みながら、大声で感想を言って、ヴラークに窘められていた。

「は〜〜〜〜」

「どうしたんですか? クラヌス様」

先程から何度か溜息をするクラヌスが気になって、ヴェシマが羽根ペンを動かす手を止めて彼女に尋ねる。

「ん? ああ、私もガラヴァー陛下に一言挨拶しようと思ってたんだけど、やっぱり私、王族の人間には見えないのかしら?」

「そんな事はないと思いますよ。クラヌス様」

「あんたに何が分かるのよ!」

言ってからクラヌスはしまったと思った。自分が不機嫌だからって、今のはヴェシマに対してただ八つ当たりしてるようにしか思えなかった。

「ごめんなさい。ちょっとイライラしちゃって」

「い、いえ。そ、そのボクもいろいろ苦労しました。その自分の見た目とか、あまり人と喋るのも苦手で、中々自分の意見も、言えない事もありました」

ヴェシマは自分の過去を思い出しながらポツポツと話していく。

「今までダンジョンの探索に行きたくても、ボクじゃ足手まといになるからと、中々仲間に入れてもらえなかったんです。けどプロスヴァーさんは、こんなボクを仲間に入れてくれたんです」

「つまりどういう事よ?」

「えっと、だからつまり、その……そう! きっとプロスヴァーさんはクラヌス様を頼りにしています。でなければ、その、仲間に入れる事はしなかったと思います……すいません説明するのは上手くなくて……」

だんだんと語尾が小さくなってヴェシマはそのまま黙ってしまう。

けどクラヌスにはヴェシマが何を言いたいかなんとなくだが分かった。

「ありがとね。ヴェシマのお陰でモヤモヤしてたものが晴れたわ」

「それは良かったです。クラヌス様」

「それよりもあなた!」

ビシッとクラヌスがヴェシマを指差す。

「はい!何でしょう? クラヌス様」

「私に様はつけなくていいわ。呼び捨てで構わないわよ」

「は、はい! ク、クラヌスさん」

「さんもいらないの!」

「え、えっと。分かりました……クラヌス」

「よろしい。今度からそう呼びなさい」

「はい。ふふふ」

「何で笑うのよ?」

「ふふ。すいません。プロスヴァーさんも同じ事言ってたので、なんかおかしくなってしまって。つい」

「もう、何がおかしいのよ……ふふ、ふふふ」

ヴェシマにつられてクラヌスも笑う。部屋の中は明るい笑い声で包まれるのだった。

「ふふ……そうだ! ヴェシマ。貴方に聞きたいことが……」

ひとしきり笑った後、クラヌスはヴェシマに対して気になっていた事を聞こうとしたその時、部屋の扉が開いてプロスヴァー達が帰ってきた。

「戻ったぞ……クラヌス目が怖いぞ」

タイミング悪く扉を開けたプロスヴァーをクラヌスは睨みつける

「あ、お帰りなさい。それでクラヌス、ボクに聞きたい事って何ですか?」

「んっ……また今度でいいわ」

「? そうですか」

「それでプロスヴァー、ガラヴァー陛下は何て?」

クラヌスは自分で話題を変える。

「ああ、陛下から許可は取れた。詳しい事は山羊の憩い亭で話そう」

「了解。それじゃあ皆さん帰りますかね〜」

ソンツェルは立ち上がると千鳥足で歩き出す。テーブルを見ると置いてあった酒が空っぽになっていた。

「お前! 結局全部飲んだのかよ」

「えっ? 一口飲んだら美味くて止まらなくなっちまったよ。おっとっと」

フラフラでバランスを崩すソンツェルに肩を貸すヴラーク。

「ほら帰るぞ。くそ、何で僕はこんな奴に借金してるんだ。全く……」

ヴラークはブツブツ文句を言いながら、ソンツェルに肩を貸して二人で歩き出す。

その後をヴェシマ、クラヌス。彼女の後ろをチャリーノスがついて部屋を出ようとする。

「クラヌス。ちょっと待ってくれ」

「何よ?」

「お前が行きたかった所があっただろ?」

「大丈夫なの? 行っても?」

「ああ、俺が案内する。ダブローノス。みんなを連れて先に帰っていてくれ」

「分かりました。それではまた後ほど」

ダブローノス達五人を見送ってから、プロスヴァーはクラヌスを連れて王族の墓地に向かうのだった。


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