第3話 七人集結 そしてダンジョンへ その3
「ん? ん〜〜。ふぁ、あさぁ?」
鳥のさえずりが聞こえ、朝の日差しを浴びたクラヌスは目を覚ます。
「あれ? わたし……何で制服着たまま寝てるんだろ?」
ベッドで上半身を起こし、寝ぼけ眼で辺りを見回す。
「ここは私の……部屋? いつの間に……」
クラヌスは自分がいつ寝床に入ったのか、昨日の記憶を思い出そうとする。
「確か、昨日は……プロスヴァー達の仲間に入る為に腕相撲して、それでわたしが勝って……あっ!」
そこまで口に出したところで、クラヌスは昨日の事を全部思い出した。
自分が腕相撲の勝負を挑み、最後にプロスヴァーと戦って勝利した事を。
「こんな所で寝てる場合じゃなかった!」
クラヌスはガバッと起き上がると、身だしなみも整えずそのままの格好で部屋を飛び出し一階の酒場に全速力で向かう。
彼女は焦っていた。もしかしたら彼らが昨日の約束を反故にして、眠ってる間にダンジョンへ向かってしまったのではないかと不安だった。
ドドドと大きな音を立てながら階段を降り、いつも彼らが集まっていたテーブルを見る。
するとそこには、自分が腕相撲で負かした面々が集まって彼女を待っていた。
「あれ? 貴方達……」
「おはよう。お姫様」
「あっ、おはようございます。クラヌス様」
ソンツェルとヴェシマの挨拶を皮切りに五人がそれぞれクラヌスに挨拶してくる。
「おはようクラヌス。よく寝むれたか?」
最後にプロスヴァーがクラヌスにそう問いかける。
「お、おはよう。ここで貴方達は何してるの?」
「おいおい、お姫様それはひどいせ。皆あんたを待ってたんだぜ」
「えっ、何で……」
「姫様は昨日の勝負に勝って、我らの仲間になったではありませんか」
「…………」
ダブローノスがそう言ってチャリーノスも頷く。
「我らが貴女を置いて行くわけないではありませんか」
「あ、ありがとう」
クラヌスは目の前の光景が信じられないのか、六人をじっと見つめていた。
「ヴラーク。ほら俺の勝ちだ。さっさと出せ」
「ちぇっ。僕の負けだよ。ほんとソンツェルは運だけはいいよな」
「フン。運だけじゃなく、お前さんよりも実力は俺の方が上なんだ。ほらさっさと出せ」
「ハイハイ」
ヴラークは嫌々な顔で懐から金貨を一枚取り出すと、ソンツェルに投げる。
「ヘヘッ、毎度」
「ああ、今日の生活費が……」
「ちょっと、何を賭けていたのよ?」
「ああ、頼んだ朝飯とあんた。どちらが先に来るかコイツと賭けたのよ」
そう言ってソンツェルは親指で項垂れるヴラークを指差す。
「あいつは朝飯が先。俺はあんたが先に来るって賭けた。結果は見事俺の勝ち」
「あっそ……」
何ともくだらないと言いたかったが、それは心の中に留めておくことにした。
背後から胃袋を刺激するいい匂いが漂ってきたからだ。
くぅぅぅぅぅっと、クラヌスのお腹が鳴る。
「こ、これは、その……」
クラヌスは顔を真っ赤にして咄嗟に両手でお腹を抑える。
「一緒に食べていけクラヌス。ただ、その前に髪は整えた方がいいな」
「わ、分かってるわよ! 馬鹿!」
プロスヴァーにそう言われて更に顔を真っ赤にしながらクラヌスは裏の井戸へ向かうのだった。
髪を整え顔を洗ってサッパリしたクラヌスを含めた七人で、テーブルの上に乗った大量の朝ご飯を囲んでいた。
山羊の憩い亭は宿屋も兼ねているので、酒場で頼めば食事も出してくれるのだ。
クラヌスは厚切りのパンの上にカリカリのベーコンを乗せて、更にトロットロのチーズをたっぷりとかけ、口を大きく開けて頬張る。
「う〜〜〜〜ん。美味しい」
一口食べただけで至福の時に包まれる。
他のドワーフ達もそれぞれの食べ方で朝食を満喫していた。
「よく食べるお姫様だな」
「何よ……女性がいっぱい食べたら……いけないのかしら?」
クラヌスは口一杯に詰め込み頬を膨らませて喋る。
それを見たプロスヴァーはまるでリスみたいだなと思っていた。
「いやいや、たくさん食べる女性はとても魅力的ですよ。なあプロスヴァー?」
「……ああ、そうだな。いいことだと思うぞ」
「……あ、ありがと」
そう言うクラヌスの顔は赤くなっていたが、プロスヴァーは全く気づいていなかった。
そのやり取りを見ていたヴェシマは、手に持っていたハムと葉野菜を挟んだパンを勢いよく食べる。
「ケホッ、ケホケホッ!」
「大丈夫ですかな? ほら水を飲みなさい」
ダブローノスが差し出した水を飲むヴェシマ。
「んく、んく……プハァ。ありがとうございます。助かりました」
「もう大丈夫かな?」
「はい大丈夫です。ハァ〜〜」
気づいてもらえずため息をつくヴェシマであった。
「で、今日はどうするんだいプロスヴァー?」
朝食を済ませ、少し休んでいたところでそうソンツェルが切り出す。
「今日は陛下の決めた期限の最終日だ。なので皆を連れて王宮に向かおうと思う」
「成る程、我らを陛下に紹介するのですな?」
「そうだ。ダブローノス王宮に入ることは可能か?」
「そうですな。期限を決めた以上、陛下も報告を待っていると思われます。恐らく門前払いにはならないでしょう」
「ならいいんだ。皆はどうだ? 反対意見はあるか?」
「…………」
誰も何も言わなかったので反対意見はないとプロスヴァーは受け取る。
「よし。じゃあ早く済ませよう。今から出発だ!」
そう言ってプロスヴァーは立ち上がり皆も続いて立ち上がるのだった。




