表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フンコロガシの子守唄  作者: るりまつ
8/9

子守唄


 巣穴に残されたタマ子は、一人で大事に大事に糞玉を守り続けました。


 コロ助がいなくなってから何日か経った後、卵は無事にかえったようで、糞玉の奥からはムシャムシャムシャと、元気に赤ちゃんがフンを食べる音が聞こえてきます。

 タマ子は毎日、その糞玉の奥の赤ちゃんに向かって話しかけました。


「早く姿を見せて、私とコロ助さんの可愛い赤ちゃん。あなたは女の子かしら、男の子かしら。元気いっぱいに食べているみたいだから、きっと男の子ね。名前は何が良いかしら。タマ助でいいかしら。ね?そうしましょう」


 それからタマ子は、やはり毎日毎日、糞玉の手入れをしながら赤ちゃんに話し続けました。


 外の世界はどんなにステキか。

 明るい色と、素晴らしい香りに溢れていて、そしてたくさんの出会いがあることを。

 それから夜になると、コロ助の好きだった子守唄を、赤ちゃんにも歌ってやりました。


 そのうち赤ちゃんは、静かになって動かなくなりました。

 どうやらサナギになったようです。

 そうなると、赤ちゃんは何も食べないので、糞玉は必要がなくなります。

 糞玉が必要ないと言う事は、手入れをしなくていいと言うことになります。


 コロ助がいなくなってから、タマ子はこれまでずっと、何も食べずに、夢中で糞玉の手入れをし続けていました。

 けれどやることが無くなった今も、不思議とお腹は全然すきませんでした。

 そしてその時、ふと自分の役目はもう終わったのだと言うことが分かったのです。


 タマ子はグッタリと糞玉にもたれました。

 そして触角を当てて中の気配を伺いながら、サナギがかえるのを心待ちにしました。


 タマ子はひと目でいいから、コロ助と自分の子に会ってみたいと思いました。


 朝も夜も分からないままに何となく時が過ぎて行き、タマ子はやることも無く、そしていつの間にか立ち上がることができなくなっていました。

 タマ子は糞玉を優しく撫でながら、そっと呟きました。


「タマ助、お母さんは早くあなたに会いたいわ……」


 そして歌を歌い始めました



  コロコロコロリン フンコロリン 


  うまく丸めてクソの玉 コロリ運んで穴の中


  食べて美味しい フンコロリン 


  あのこと一緒に ネンコロリン



 歌い終わると、タマ子は静かに横になりました。

 なんだか自分の子守唄に、自分が眠くなってしまったようです。

 体が重く、冷たく感じられ、土の中に吸い込まれそうなほど眠いのです。

 仕方なく目をつむると、タマ子は一つの事に思い当りました。


  あぁ……そうだ


  あの時いたのは、私のお母さんだったんだ……


 そしてそれに気が付くと、冷たくなりかけていたタマ子の心は、ふんわりと、とてもあたたかく穏やかになりました。

 重かった体が、だんだんと軽くなり、初めて空を飛んだ時のように感じられました。

 そして優しい笑みが、口元にそっと浮かびました。




 早くあなたに会いたいわ……











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ