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フンコロガシの子守唄  作者: るりまつ
6/9

祝福

 


 そして次の日、タマ子は約束通りに、陽が沈むちょっと前に湖にやってきました。

 大きな太陽が空を真っ赤に染めて、それと一緒に湖も、草原も何もかもが、燃えるような色をしています。

 こんなに素晴らしい夕焼けを見たのは、タマ子は初めてでした。


 しばらく空を飛びながら、その美しい景色を眺め、それから水牛のいる草原に、タマ子は降りたちました。

 辺りは夕食を食べ終えた水牛の、新しいフンの香りが立ち込めていましたが、タマ子はコロ助との約束を守って、糞玉は作らないで地面に座って待っていました。

 すると後ろから、ゴロンゴロンゴロンと大きな音がして、巨大な糞玉が転がって来るのが見えました。

 それは今まで見た事も無いくらい大きく、まん丸い、どこから見ても文句のつけようのない完璧な糞玉でした。

 そしてそれは、タマ子の前でピタリと止まったのです。


「まあすごい!」


 タマ子が思わず歓喜の声を上げると、その巨大な糞玉の後ろから、コロ助が姿を現しました。

 いつもより念入りに触角を手入れし、お腹に生えた微毛も櫛けずり、後ろ足のトゲも、背中も何もかも、ピカピカに磨かれています。

 そして少し緊張した声で言いました。


「タマ子ちゃん。どうかこの糞玉に乗って下さい。そして僕の新しい巣穴を見に来てくれませんか?僕が一生懸命作った、大きな大きな巣穴です。そしてその中で、僕と一緒に暮らしてほしいんです。……昼間しか会えないのはもうイヤなんだ。夜もずっと一緒にいたいし、二人で朝を迎えたい」


 それは、コロ助からのプロポーズでした。

 タマ子はそれを聞いて、嬉しくて泣き出しました。

 そしてやっぱり言葉がうまく出てこなかったので、かわりにコロ助に抱きついて、大きく大きくうなずきました。

 それから急いで糞玉の上によじ登り、一度滑り落ちそうになりましたが、コロ助はそれを下からしっかり支えて、タマ子は無事に、巨大な糞玉のてっぺんに登ることができました。

 大きな糞玉が転がり始めると、いつの間にか周りにいた、フンコロガシの仲間達が逆立ちをして、後ろ足で大きな拍手を送ってくれました。

 草むらの中から、夜の虫達の合奏が響き始めます。

 それに合わせてタマ子が歌を歌います。



 コロコロコロリン フンコロリン 


 あなたと一緒に ネンコロリン


 すっと一緒に コロコロリン……










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