タマ子とコロスケ
この頃にはもう、
君の可愛い唇から、小さな寝息が聞こえ始める。
ここからが良いトコなんだけどな。
もう二度と誰かに話す事はないだろうから、
ボクの記憶からこの物語が消えないうちに、
物語と共に、君の記憶が薄れてしまわないうちに、
今日は最後まで聞いていて欲しい。
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それからタマ子は、湖のほとりでコロ助に会うようになりました。
コロ助からはいろんな飛び方も習ったし、糞玉の上手な丸め方や、転がし方も教えてもらいました。
けれど、タマ子がきれいに糞玉を丸めて運べるようになってからも、コロ助がいる時はいつも、それを巣穴まで運んでくれるのでした。
タマ子はその糞玉の上で、のんびりと歌を歌っているだけでいいのです。
コロ助はその歌声を聞くのが好きでした。
コロコロコロリン フンコロリン
うまく丸めてクソの玉 コロリ運んで穴の中
食べて美味しい フンコロリン
あのこと一緒に ネンコロリン
風に吹かれて糞玉の上で歌っているうちに、タマ子が以前、コロ助に教わって作った、新しい巣穴に着きました。
そして糞玉を穴に埋める前に、二人でそれに寄りかかって座り、一緒にフンを少し食べ、それから話をしました。
それがいつの間にかコロ助にとって、幸せのひと時となっていました。
「タマ子ちゃんのその歌は、誰に教えてもらったの?」
「それが私にも良くわからないの。何だかうっすらと覚えはあるんだけど、はっきりとは思い出せないの。けれど歌だけはちゃんと頭に浮かぶのよ」
「ふーん。不思議だね」
「そう、自分でも不思議なの」
コロ助は前あしの先を見ながら言いました。
「僕ね、タマ子ちゃんの、その歌が好きなんだ。一人で自分の巣穴に戻るとね、たまに寂しくて眠れなくなっちゃう時があるんだ。そんな時はね、タマ子ちゃんの歌を思い出す。そうするといつの間にか眠ってて、ちゃんと次の朝がやって来るんだ。そして穴から出て朝日を浴びると、すぐに湖に飛んで行きたくなるんだ。タマ子ちゃんに会いたくて」
コロ助はひと息に言いました。
それを聞いて、タマ子はとても嬉しくなりました。
嬉しすぎて胸が詰まり、何も答えられなくなりました。
タマ子が黙っているので、コロ助はじっとしていられなくて立ち上がりました。
「……タマ子ちゃん。明日は日が暮れるちょっと前に、湖の草原に来て欲しい。そこで糞玉は作らないで待っていて。僕が先にいて、タマ子ちゃんをすぐに見つけるから」
そう言うと、タマ子の返事は聞かないまま、顔も見ないで、コロ助は急に飛んでいってしまいました。