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フンコロガシの子守唄  作者: るりまつ
2/9

地上

 ポコン。


 突然穴があき、タマ子の目の前は真っ白になりました。

 どうやら地上に出たようです。


「うわぁ、まぶしい!!」


 タマ子は小さな黒い目を触覚で覆い隠しながら、前あしを踏んばって穴の外に出ました。


 そこは、驚きの世界でした。

 キラキラと全てのものが光り輝き、熱い風が吹き、いろんな匂いがあふれていました。

 タマ子が恐る恐る地面を歩き始めると、


「邪魔だ邪魔だ!!」


 と、大きな怒鳴り声がして、緑色の長い翅を持ったバッタが、タマ子の上を飛び越していきました。すると今度は、


「わっせ、わっせ、わっせ、わっせ」


 と、小さなたくさんの声が聞こえてきて、アリの大群が、のたうちまわる毛虫を引きずりながら運んでいます。


「わー助けてくれー!誰かー!!」


 毛虫はアリに連れ去られながら悲鳴を上げていましたが、生まれたばかりのタマ子には、どうする事も出来ずにそのまま見送ると、今度は上のほうから、


「ズンタッタ〜、ズンタッタ〜、ズンタッタ〜、ズンタッタ〜・・・」


 と間の抜けた歌が聞こえてきて、顔を上げると、大きな黄色いハチが鋭い翅音を立てて、真っ青な空を一目散に飛んでいくのが見えました。

 そしてその空を吹く風にのって、何だかとっても良い匂いがしてきました。

 香ばしいその匂いに、タマ子は小さな触角をフンフンと振りました。

 それはとても美味しそうな匂いです。そしてタマ子はようやく、自分はお腹がすいているんだと気が付きました。


 この匂いのするところに私も行きたい・・・


 そう思ってハチの飛んで行った空を見上げていると、自分の丸い背中の奥が、ググググッと熱くなってきて、タマ子の体に、何か新しい力がみなぎりました。そして、


 プンッ!


 と弾けるように背中の硬い翅が二つに割れると、その下から透きとおったしなやかな翅が現れて、気が付くともう、タマ子の体は空高く舞い上がっていたのです。









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