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フンコロガシの子守唄  作者: るりまつ
1/9

とある広い広い 砂漠を越えて

 乾いた草の生えた平原を抜けてどんどん遠くまで行くと、低い細い木々に囲まれた大きな湖がありました。

 そこにはたくさんの動物たちが集まって暮らしています。

 その湖からちょっと離れた、柔らかくしっとりとした土の下で、今、一人の女の子が目を覚ましました。


「ふあ〜。ずいぶん良く眠ってたみたい」


 そう言って、女の子は前あしを高く上げて伸びをしました。


 女の子の名前はタマ子。

土の巣穴の奥深く、水牛の糞玉の中に埋もれたサナギを破って、ようやく出てきたフンコロガシの子です。


 目覚めたばかりのタマ子は、前あしを上手に使って身づくろいを始めました。

 まずは短い小さな触角の先についた古いフンを、丁寧に丁寧にこそぎ落します。

 それから顔を拭いて、6本の足でお腹をいっぺんにゴシゴシ擦っているうちに、中あしと後あしがもつれて、ころりと転んでしまいました。


「きゃっ」


 タマ子の黒い硬い翅に覆われた丸っこい体は、暗い土の巣穴を転がって、何かにドスンとぶつかりました。

 お腹を出して引っくり返ったタマ子は、しばらく手足をバタバタさせていましたが、そのぶつかった何かに掴まり、ようやく起き上ることができました。


 掴まった何かを見てみると、それはタマ子と同じ、フンコロガシの誰かでした。

 タマ子は他に人がいるなんて思いもしなかったので、びっくりして謝りました。


「ごめんなさい、私……」


 けれどその人も眠っているみたいで、タマ子がぶつかっても全然起きません。

 タマ子はそっと、その人の丸い背中に手をかけて揺すってみました。

 それでもやっぱり起きてくれません。

 そして、よくよくその人の背中を見てみると、硬い黒い翅にはツヤが無く、うっすらと白い粉のようなものが浮いていて、少し変な臭いが漂ってきました。


 タマ子は何だか怖くなって、その人から手を離すと、二、三歩、後ずさりました。

 すると今度は、ドンッ、と巣穴の壁に体が当りました。

 タマ子が壁の方を向くと、上の方に狭い穴が開いているのを見つけました。

 そして急いでそこに向かうと、その狭い穴を広げるように、いっしょうけんめい土を掻き出し、少しずつ上に登って行きました。


 冷たい土の中から、段々とぬくもりが感じられる、上の方を目指して行きました。


 上へ、上へ、上へ……








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