???話 こうして英雄は殺された。
よろしくお願いします。
幾多の苦難、幾多の困難、数多の敵を乗り越えて、そして男は英雄になった。
祖国を救い。主君に尽くし、民衆に尽くした。
誰もが男を英雄と認め、誰もが男を慕っていた。
だが、ある時――男は殺された。
暗殺ではない。
民衆の前で、男が守ってきた者達の前で男は磔にされ殺害された。
罪状は反逆罪。
――国家転覆を目論んだ男は王権打倒を掲げ暗躍していた。
男は忠誠を尽くすべき王を騙し、守るべき民衆を騙し、国を欺き続けた極悪人――
そう、男は嵌められたのだ。
男の活躍を妬む者達によって。
光は強くなればなるだけ影を濃くする。
その者達にとって英雄と持て囃される男はまさに癌といえる。
故に男は殺された。
その者達の勝手な偏見と独断で罪状をでっち上げられ、碌な裁判も開かれぬまま拘束され、その日の夕刻に処刑された。
男の遺体はそのまま数日間さらされ、最後には火をかけられた。
火柱が王都の夜空を焼く。
轟々とうねりを上げながら、その炎は一月燃え続けた。
なんの糧もなく燃え続け、揺らぐ炎に人々は恐怖した。
その不気味さに耐え切れず、幾度その炎を消そうと水を掛けただろうか。
だが、その炎は水を掛ければかけるだけその炎の勢いは増し更にうねりを上げて燃え上がる。
まるで英雄であった男の怒りを体現したかのように。
風雨であろうと豪雨であろうとその炎は消えることはなかった。