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久坂玄瑞伝  作者: sigeha-ru
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維新の礎(8)




最後の建白書を出してから、藩内は大いにもめた。

長井を処罰すべしという意見と、これだけの理由では罰するに値せずとの保守的意見の対立。



「御殿に申し上げます。長井殿の処罰を求めておる久坂玄瑞らの意見をまたも撥ね付けては

彼等が脱藩なぞし兼ねぬと言う懸念があります。そして久坂らには匿うに十分な同志が他藩に

散らばっている。我藩にとって有益な逸材を切り離すやもしれぬ事はならぬと存じますゆえ、

これこの度は久坂らの言に従うが宜しいかと思われまする。」



この一言から更に藩内は揺れた。

そうして藩主は遂に処すべしとの勢力に折れたのだった。



この事から、少なからず松門一派の政治的台頭が覗える。

数日後、長井は自宅謹慎を受ける。



(わしは間違いは言っていない。攘夷攘夷と口先で唱えるは容易いが、現実に諸外国の

力を知らん者の意見である。我論は今の世情にちと早すぎ理解者は現われなんだか・・・

実に無念じゃ・・・。)



翌朝、藩内で重役についていた国司信濃が長井邸を訪れ直接長井に向かって罪状を述べ

その日のうちに極刑を申し渡すのであった。

長井は胸中に得もいえぬ憂いを残しながらも最後はやはり武士として潔く刑を受け入れ

堂々とした成りで愛刀を腹に突き立てるのであった。


彼の最期は余りに整然としており、中々介錯を許さず独りで果てたその古武士の潔さは

政敵として戦っていた久坂達すら驚嘆するものであった。

こうして、彼等の道は再び開かれ、久坂も遂に蟄居を解かれた。




翌年久坂は再び国暇を得、江戸へと向かう。

この時は高杉や井上ら同志も共に出立しいよいよ村塾生が動き出すのであった。



江戸へ着いて以前と同じ様に、藩邸からいくらか離れた座敷を借りきり、久しぶりに土佐や

薩摩志士と大いに会談を果たす。



「いや、それにしても良う御座いました。長州が動けぬでは我等も上手く事が運ばんでいやはや

苦労がしたですよ。」



「申し訳ない。漸く長井を制する事に成功し、これから本腰入れて尊攘活動に精を出せるというものです。」



武市の安心した様な表情に、久坂も苦笑いしながら言葉を返す。

高杉や井上、伊藤などもそれぞれに臨席する志士達と賑やかな対談をしている。

ソレを見て、久坂は改めて自由を得たという気持ちになった。



藩邸へ戻り再び同志を集めての会談を開始すると、久坂は一つの案件を脳裏に浮かべた。




「のう、皆口は堅いほうか?」



久坂の唐突な質問に一同は賑わいを一時止めた。



「な、なんじゃ?玄瑞よ、どうしたんじゃ?」



「正直に言うてくれ。」



久坂の突然の真剣な面持ちに一同は顔を見合わせた。



「で、玄瑞よ。どうしたんじゃ?」



解らぬという顔で高杉が答えを聞き返してくる。



「僕が言う事を口外せぬと言ってくれぬ限り言う事はできん。」



「おいおい、僕らは同志じゃないか。玄瑞に不利になるような事は一切せんのが当たり前


じゃろう?解った!お主がそこまで言うなら口外一切せぬと誓おうじゃないか!。」



「おお、そうじゃ。僕らも口外一切せぬ!」



松門の志士たちは口々に言う。

そこで彼等の言葉に信を得て久坂は漸く口を開いた。



「・・・品川御殿山に幕府が何を作っとるか知っとるか?」



「え・・・?」



「ああ、英国の屋敷じゃろう?それがどうかしたんか?」



久坂の言葉に、井上と高杉はすかさず反応する。

だがそれらには返答返さず久坂は更に言葉を続けた。



「そう、英国人邸じゃ。幕府が作らされたな。これをどうにかしちゃろうと思うとるが。」



「成る程、攘夷攘夷と言うだけではなく実践して皆に知らしめる訳か!」



「うん。もうじき完成するらしいし、どうせなら夷敵が居座った時期に派手にやってやる

のが効果あると思うてな。」



「ほう・・・で、折角出来た大層な屋敷を一瞬にして焼き払うんじゃな?」



彼の発する言葉に面白いといった表情で皆喰らいつく。



「よし!やろうじゃないか。参加はここで今話しとる者だけにしよう。具体的な計画と

日時は・・・・」




−この晩から数回に渡る綿密な打ち合わせが成され、いよいよそれが実行されたのは

文久二年12月の事であった。









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