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久坂玄瑞伝  作者: sigeha-ru
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維新の礎(6)





客間でただ静かに座って待つ大楽源太郎のもとへ久坂は急ぎ足で駆けていった。



「源太さん!」



ガラッと大きな音を立てて入ってきた親友に一瞬だけ驚いた顔を見せた大楽だったが

直ぐに何時もの落ち着いた表情に返って薄く笑った。



「やあ、久坂君。この度は大変な事になったな。」



「ああ、やはり皆知っていたんですね。」



「あれだけ賑やかな君が顔を見せないとなると・・・やはりな・・・。」



久坂玄瑞謹慎との報は同志たちの間で瞬く間に広がり、実は先日から心配した

彼の同志やこの大楽のような親友が訪問すること後を絶たない。

嬉しくも有るがどことなく恥ずかしい様な悔しいような気持ちさえ持つ久坂にとって

実に複雑な訪問であった。



「源太さん。この間お話した長井雅楽の・・・」



「ああ、こっぴどくやられたな。松陰門下の者、それに同調するものに目を光らせている。

だが、こちらとて馬鹿ではない・・・。」



「ええ、この間のアレ、どうでしょう?まだ時期尚早と言えましょうか?」



そういって久坂はこの間の大楽邸訪問で彼から直接に受け取った一枚の紙切れを

目の前に差し出した。当然未開封のままだ。



「うん。本来ならばまだ早いというべきじゃが・・・君自身がその調子では致し方ないか。

開いて見ると良い。」



「有難う御座います。これで上手くいくでしょうね。」



「君次第じゃろう。今後を考えればこんな所でまごついている場合じゃないしのぉ。」



ははと笑って大楽は言い放った。

釣られて久坂も笑みを溢す。



「これが上手くいけば僕は再び活動できる・・・」



そう思うと嬉しくてたまらない。

久坂は思い切って封を切ったのであった。








さて、彼等がこの後人騒動起こす前に、ここ長州藩の杉家に珍しい風が舞い込んだ

事があった。


縮れ毛で近目の巨漢、後に薩長軍事同盟・大政奉還など数々の功績を残した土佐の

坂本竜馬その人である。

竜馬は当時、勤皇党の主として牛耳っていた一族の武市半平太(瑞山)より一通の

書状を携え遥々久坂玄瑞を訪ねてやってきたのだが、いかんせんこの男は態度が実に

堂々というのか飄々としてつかみ所がない。

当初、剣術に秀でた彼を試さんと楽しそうにアレコレ指示出して動いていた久坂もほとほと

暢気に構える竜馬の姿に困ってしまう始末。

さてどうしたものかと考えあぐねているところで漸く、彼は武市より預ったという書を懐

より取り出すのであった。




手紙を見て久坂はあれと思った。特別活動について書かれている訳でもない。

文頭の挨拶で始まり、あとはこの坂本竜馬なる人物を向かわせるに当たって、信の

置ける同士である故、臓腑なく意見を聞かせて欲しいとの事。

この程度が記されいる。



「まあ、今日来たのは陣中見舞いの様なもんでしょな。」



竜馬はがはっと豪快に笑い飛ばした。

それを見て久坂も苦笑いを洩らす。



「しかしながら、こちらの書状に有るとおり、盛んな活動をと言われましても僕も

藩論は延暦策にやぶれご覧の様に蟄居の身。どうして良いもか・・・。」



やや自嘲気味に久坂が述べると、先ほどまで笑っていた竜馬は急に真剣な面持ちに

なり、声を潜めて言う。



「それならばちくと案がありますがの。国抜の覚悟で事に望む他ない思うちょります

き・・・。土佐者達も例の長井いう男、長州者で斬れんならワシ等が斬っちゃる言よる

がじゃ。」



そう言って、竜馬は暫く滞在し時勢を論じると再び土佐へ戻っていった。

その数日後には同じ土佐の吉村寅太郎が訪れこちらは具体的な計画を持ち込んで

来るのであった。

















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