維新の礎(5)
突然の謹慎命令に久坂は愕然とした。
「な・・・何じゃと!?何故に僕が・・・!」
「檀那様・・・!」
「久坂君・・・。」
杉家では家族までもがこの信じ難い命令に動揺隠せない。
その晩から久坂は書斎に引き篭って、ただ黙々と書物を読み漁る様になっていった。
それから数日経ったある日の事、杉家に珍しい訪問者が現われた。
何時もの如く、庭先の掃除をしていた妻・お文は玄関先でその人物を見つけた。
「あら、お客様かしら・・・?」
パタパタと箒を壁に立掛けて客人と思しき男に近づく。
彼女に気付いた訪問者はゆっくりと振り返りその姿を認めると薄っすら微笑んだ。
「こんにちは平安古の大楽と申します。久坂君が謹慎命令を下されたと人づてに聞いたもので。
心配になって来て見たのですが。」
「・・・平安古の大楽様・・・良う存じておりますよ。貴方様がお越しくだされば主人も喜びましょう。
ささ、是非にお上がりになって・・・」
お文は嬉しそうに大楽を向かえ、奥へと通すのであった。
「檀那様。平安古の大楽様がお見えですよ?」
大楽を客間に通した後、お文はすかさず書斎に居る夫の元を訪ねていた。
嬉しい訪問者に久坂は我武者羅に読み漁っていた書物を勢い良く閉じ、ガバッと立ち上がった。
「まことか!?」
「ええ、ええ、まことに御座います。客間にお通し頂いてますよ、私直ぐお茶のご用意致しますので
檀那様もお出でになってくださいな。」
そういってお文はツツツと静かに廊下を走り去った。