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久坂玄瑞伝  作者: sigeha-ru
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激動の風(4)






長州萩を出てから野村は一人ひたすらに京の都を目指した。



かつて久坂達が歩いていった街道を・・・・・・・・・・。



睡眠と食事、必要な事意外では休む間すら惜しんでひたにただ敬愛する師の為に進む日々。


2足持って出た草鞋も最後の一つとなり、足は所々血豆が出来てなんとも痛々しい様である。



(・・・・先生、待っていてください。必ず悲願を達成させてみせます!)



例え、叶わぬ事であったとしても・・・今は自身に課せられた使命を全うするのみ。野村は疲労し

傷つき痛む足を引きずりながら、物凄い速さで上京を果たすのであった。




野村和作が京へ上ってから数ヶ月が過ぎた頃、萩でも一つの騒ぎが起こっていた・・・・・・・・・・・・。




「全く寅次郎は何を考えとる!無茶をする奴じゃとは思うとったが・・・今回だけは見逃せん!」



「ええ、この度ばかりは松陰先生のお命にも関わる事。事もあろうにお上を敵に回すなど・・・いくらなん

でも今事を起こすは時期尚早でございますな。どうお止めすればよいでしょうか?」



周布政之助が捲くし立てる傍で心底困った表情の小田村伊之助が(後の楫取素彦男爵)淡々と言葉を口にする。



「兎も角、藩に知らせなければなるまい。話に寄れば、入江九一の弟・野村和作は既に京へ上がり公卿様の

元へと向かって居るとか。一刻も早く寅次郎を・・・、もし幕府に知れてしまえば我藩とて無事では済まん!」



周布は畳の上に座り込み頭を抱えこんで苦々しく言葉を吐き出す。

小田村もまた、苦渋の表情で彼を見守るのであった。



(なんとかして寅次郎達を止めねば・・・。幕府側に知られる前に!)



二人は拳を握り締め、互いに目で確認を取ると其々にあるべき場所へと歩き去っていったのである・・・・・・。




話戻って、京の都へ無事到着した野村和作・・・。

彼はやっとの思いで都へたどり着くと、遊女芸妓の誘惑もそっちのけで京都藩邸へ転がり込んだ。


散々に旅の疲れを癒す事2日・・・


野村は滞在3日目の朝早く、皆が目覚めるよりいち早く起き出し身支度を整えると、朝餉すら取らずに

急ぎ早に御苑へと足を運んだ。

勿論目当ての公卿に会う為である。



御苑付近の目的地へ着くと、野村は松陰の書を手に面会の許しを願った。


公卿・大原邸−・・・・・・普段なら垣間見ることすら出来ぬ宮中貴族の邸宅であり、並みの藩では

取り次いで貰うにも時間がかかる筈だが・・・・。


流石に雄藩。少し待った程度で、貴族の屋敷へ足を踏み入れる事を許される。野村は緊張した面持ちで、

屋敷の主人を待ちわびた。



「お待たせしましたなぁ。麿に何か用ですかな?」



暫く待ったか、ミシミシと少し軋む廊下の木板に気付き顔を上げると低音で品のある声が空から降ってきた。

聞きなれぬ不思議な言葉遣いに一瞬首傾げる野村だったが、現われた人物の装束に息を飲む。




衣冠束帯の装束を纏う貴人。




如何にも都人らしい雅を漂わせるその人こそ、今回の旅の目的ともいえる大原卿その人であった・・・・・・・・・。












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