約束
「夏…俺、戦争に行くことになった。」
夏は頭が真っ白になった。《別れ》この言葉が心に突き刺さった。
「嘘…だ。」
「嘘じゃない。」
大人はこんな子供にまで何をさせるんだ。
「いつ…行くの???」
「明日。」
「帰ってくるよね。」
「……。」
冬也は小さく頷いた。
夏は泣きだした。
「なっなんで泣くんだよ。俺は帰ってくるんだから。
「そうだよね。」
また無理に笑う。
時間がなかった。明日にはいなくなる冬也。
「夏…今日いっしょにいてくれる???」
「うん。」
2人は他愛もない話をしながら歩いた。
楽しかった。明日冬也がいなくなるなんて思えなかった。2人はいつも遊んだ丘に向かった。花が綺麗に咲いていてとても空気が澄んでいる。
「うひゃー。やっぱここは気持ちいいね。」
「うん。俺ここ大好き。」
「私もだよ。思い出がいっぱい。
「突然だけど俺なぁ…夏が大好き。他の誰ょりも。」
「私が先に言おうと思ってたのに。」
「やっぱり俺たちは繋がってるな。」
「すごい嬉しいよ。本当にありがとう。」
「実はさ…俺帰ってこれないんだ。」
「わかってるよ。」
「えっ???」
「だって冬也、嘘つくとき絶対声出さないよ。嘘だってすぐわかった。泣かないように頑張ったんだけど無理だったよ。」
「そっか…。ごめん。」
「なんで帰ってこれないの???生きて帰ってきてよ!!!」
「無理なんだ。生きて帰ってこれない。」
「何で???頑張って生き残ってよ。」
夏は泣きだした。
「俺は特攻隊に入ったんだ。」
「特攻隊???」
「そう。飛行機に乗ったまま敵地に突っ込むんだよ。絶対に帰れないんだ。」
「何で冬也が…何で冬也がそんなことしなきゃいけないの!!!!」
「もう決まったことなんだ。俺は死から逃げられない。短い人生だったけど夏に会えて良かったよ。本当に楽しい毎日だった。悔いはないよ。夏と会えたのは運命だって信じてるから。」
「私だって運命だって思ってる!!!!名前だって夏と冬だもん。すごいじゃん。」
「本当だね。けど俺はいなくなる。夏は強く俺の分まで生きてね。そんでちゃんと結婚して赤ちゃん産んでしっかり年とって皆に見守られながら死んでね。約束だよ。」
「わかった。約束する。」