切なさ
「初めまして。〇〇県から来た、田中東弥です。よろしく。」
簡単なあいさつをすませた。もうクラスの女子は騒ぎ初めていた。
「皆仲良くしろよ。んじゃ、田中の席は…おっ!!!あそこが空いてる。あそこに座れ!!!!」
一番後ろの一番窓側が東弥の席になった。その横が私…。
「よろしく。まだ何もわかんないから色々と教えてね!!!」
さっきとは打って変わって明るい。その声は懐かしいような気がした。なぜかほっとけない感じがする。
「うん。よろしく。困ったら何でも聞いていいよ。」
「やっぱり変わらないね。夏は…」
「何か言った???」
「なんでもないよ。」
夏美と東弥は席が近い所為かすぐに仲良くなった。
話もよく合うし、いっしょにいて落ち着く。1ヵ月もすると何でも話せる相手になっていた。
「私、やりたいコトが見つからないの。もう死んでもいいって思ってた。」
「過去形???」
「過去形だよ。今はもうそんな気持ち薄れてる。東弥が色々相談乗ってくれたから楽になれた。」
「そっか…良かった。」
2人はいつも屋上で話す。夏美は空が大好きだ。それは偶然にも東弥も。
カラッと晴れた日が2人とも好きだった。
しかし夏美は切なくなる時もある。理由はわからないがとても悲しい。涙が出た時もあった。
「もう完璧夏だね…」
その夜不思議な夢を見た。頭にこびりついて離れない夢を…。
こんなに繊細に覚えていて少し気味が悪かった。






