運命
夕焼けこやけで日がくれて
山のお寺の鐘が鳴る
お手て繋いで皆帰ろう
カラスといっしょに帰りましょう
初めて一人でおりた丘。
心が痛い。
けど強く生きるんだ。
冬也の分まで。
夏は学校から病院で負傷者の治療の手伝いをしろと指示を受けた。
夏はそこで一生懸命働いた。少しでも多くの人を救うために。
夏はその病院で死んだ。
病院が空襲を受けたのだった。
神様なんて気紛れ。
一生懸命な夏を殺した。
けどその分幸せにしてくれるよね。
私が神様だったらそうしてあげるよ。
夏は薄れゆく意識の中で来世の幸せを願った。
2人はここで目覚めた。
顔は涙でぐっしょり濡れていた。
「おっ!!!起きたかい。だいぶ悲しかったみたいだね。先生は内容は知らないけど君たちには良い体験になったんじゃないかな。」
2人は病院を出た。
「びっくりだね!!!私たちの過去があんなだったなんて…すごく悲しかった。私死んでもいいだなんて思って。夏と冬也に悪いことした。私が死んだら夏と冬也の苦しみが水の泡になっちゃうのに。」
「いいじゃん!!!過去が見れたから夏美の気持ちが変わった。今は死にたくない。それでいい。過去に捕われちゃだめだよ。今の俺たちは夏と冬也じゃなくて夏美と東弥なんだから。今を大切に生きよう。けど夏と冬也の想いも背負ってね。」
「夏と冬也の想い…。」
「そぅ。幸せになるって想い。2人で。俺は夏美とだったら全然かまわないよ。むしろ嬉しいぐらい。俺自然と夏美に引かれてた。スキなんだよ。」
「私もそうかもしれない。出会ってあんまり時間たってないのに東弥がスキになってた。運命なのかな。」
「運命…そうかもしれない」
2人は手を繋いで歩く。
夏と冬也の想いを乗せて。
空はカラっと晴れたあの日の空のようだった。