表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

【短編版】婚約破棄されたのは最強の悪役令嬢でした

作者: 影茸
掲載日:2026/08/15

試験的短編です!

「マリアベル、貴様と婚約破棄する!」


 その叫びが響きわたったのは、しんと静まりかえった夜会でのことだった。

 想像もしない叫びに、誰もが押し黙っている。

 その沈黙の中、私、マリアベルは目の前の恋人へと目をやった。


 金髪碧眼の容姿に、高すぎない聞きやすい声。

 間違いない、私の婚約者であるミラベル王太子殿下だ。

 その後ろに黒髪の女性を庇うように立った彼は、私を睨みつけている。

 その表情も良く見覚えがある。


 そう確かめた上で、私は叫んだ。


「目の前の狼藉者をとらえろ! こいつは殿下の名前をかたる偽物だ!」


「……は?」


 きょとんとした表情が殿下の顔に浮かぶ。

 その表情も私には見慣れているもので、故にさらなる迷いが私の中に生まれる。

 しかし、その内心を必死に押さえつけながら私は衛兵に叫ぶ。


「なにをしている! 早く押さえろ!」


「し、しかし、ここにおられるのは本当の殿下で」


「痴れ者が! こんな馬鹿なことを言うのが本当の殿下だと言うのか!」


 そう言うと、実際に自覚のあったらしい衛兵が口ごもる。


「それはそうなのですが……」


「き、貴様ら! 無礼も程程にせんか!」


 ずっと呆けていた殿下、もとい偽物が顔を真っ赤にそう叫んだのはその時だった。


「誰が偽物だ! 私が本物だとどうしてわからぬ!」


「確かに貴様の演技が並外れていることは認めよう」


 まっすぐ偽物の目を見返しながら、私はそう告げる。

 わずかに怯むその姿に、さらなる既視感を覚えながらそれでも私は続ける。


「そのそぶり、間、少しついている寝癖」


「なっ!」


「そうだ。そのあわてて直すそぶりもよく殿下に似ている。まるで殿下の生き写しだ。だが、その程度で騙せると思うなよ」


 そこで言葉を止めた私はわずかに胸を張り、告げる。


「殿下が私との婚約を破棄する訳がないだろう!」


 しんと静まりかえる夜会。

 その沈黙にあったのは、私の言葉への無言の同意だった。

 そう、この場にいる全員が私の言葉に同意していた。


 ……私のことを婚約破棄するなどあり得ない、と。


「アリアベル、貴様……! 一体何の権限があってそのような口をたたいている!」


 目の前の偽物がそう激高したのはそのときだった。

 ずさんな偽物に、私は呆れながら口を開く。


「権限? なにを言っている? 本当になにも知らないのだな。いいだろう、教えてやる」


 しんと静まりかえった夜会の中、全員の視線が私の方に集まるのを感じながら私は堂々と告げる。


「私はマリアベル・グランベル。──この国の英雄たる紅蓮の魔術師だぞ」


 世界各国に轟く、自身の二つ名を。


「わ、私初めて聞いたわ……!」


「マリアベル様の名乗りを直に見られるなんて……」


 私の言葉に、夜会中にひそひそ声が漏れる。

 それを聞きながら、私は内心思う。


 ……こうしてやけに持ち上げられるようになったのはいつからだろうか、と。


 隣の公国を退けた時か、神聖王国のパラディンとの一騎打ちに勝利したときか。


 はたまた、隣の魔王たる帝王に、私は大陸の七大魔術師の一人、紅蓮の魔術師に値すると言われ始めた時からか。

 かなり前からの話になるのだが、未だもてはやされることに慣れない私は思わず顔をしかめる。

 どうしても、この空気だけは慣れないと。


 ただ、私は英雄と自称しても誰もが文句を言わないほどの軍人だった。

 ゆっくりと偽物をにらみながら私は続ける。


「確かに、私は令嬢と見れば欠点だらけの人間だろう」


 私は父が死んでからずっと戦場で過ごしてきた。

 令嬢のマナーを教えてもらったのは、一体何年前になることか。

 ただ、私は自分の価値をよく知っていた。


「それでも、今の私がいなければ帝国はすぐに攻めてくるぞ。それを知りながら、私を婚約破棄するほど、ミラベル王太子殿下は馬鹿ではない!」


「なにを言っておる! 私が本人だと言っておるだろうが!」


「……これ以上、私の前で殿下を侮辱して見ろ。後悔することになるぞ」


 そう言いながら私が目の前の偽物をにらみつけると、偽物が初めて気圧された様子を見せる。

 ……本当に殿下のような態度を取るな。

 偽物の様子に胸が痛むのを感じつつも、それを表に出さない。

 殿下の名前を下げることだけは絶対に許さない、そう周囲に見せつけるように。


 確かに、殿下はそもそも評判が良くはない。

 とはいえ、私を婚約破棄するほどに愚か、という噂が流れればその評判はさらに下がる。

 それを許す訳にはいかない。

 そんな私の内心を知ってか知らずか、偽物はなおも果敢に続ける。


「ふ、ふざけるな! そもそも何だ、その紅蓮の魔術師とは! マリア、貴様はただの魔術師だろう!」


「……っ」


「そもそも、私は事前に婚約破棄すると伝えておいただろうが!」


 私をにらみつけ、顔を真っ赤にして告げる偽物。

 その言葉を聞いた時だった。

 私の心に、ある可能性が浮かんできたのは。


「もしかして貴様……。いや、貴方は本物の殿下……!」


 そう言いながら、私の頭にある言葉がよみがえる。

 それは数日前、急に言われた言葉。


 ──数日後、私はお前を婚約破棄するから首を洗って待っていろ!


「ようやく理解したかこの馬鹿者が……!」


 私は今、本当に婚約破棄されている。

 ……その事態を理解したのは、その瞬間だった。


 勝ち誇ったような表情が偽物、もとい殿下の顔に浮かぶ。

 私は思わず言葉を漏らしていた。


「ま、まさか、そんな……」


「ようやく事態を理解したか、マリア」


 想像もしていない事態に、私は身体の震えを抑えることができない。


「こんなに殿下の頭が愉快だったとは……!」


「は?」


 確かに、今まで何度も殿下はたかが魔術師風情、そう私を見下していた。

 そして、何度も婚約破棄をすると私に宣言していた。

 ……ただ、本当にこんな衆目の面前でこんなことをするなど、私は想像もしていなかった。


 今、実際に婚約破棄されて私の心にあるのは呆れだった。


「……私はどうやって、殿下のおめでたい頭を矯正すれば」


「き、貴様……!」


 思わず私の口から漏れた言葉に、殿下は顔を真っ赤にしてなにも言えなくなる。

 言えば、怒りが最高潮に至りすぎてなにも言えなくなった状態といったところか。

 それにようやくこれが無礼だと私が気付くが、すぐにそんなことは頭から締め出す。

 正直、そんなことが些事に思える状況が今なのだから。


 ……そんな私の考えがずれていないことを証明するように、夜会にいる貴族が殿下に向ける目は全て哀れみか、呆れの視線だ。


 それを感じながら私は思う。

 何とか穏便に殿下を抑えないと、と。


「……貴女のそう言う態度がミラベル王子の今の態度を招いたと、どうしてわからないのですか!」


 聞いたことのない声がしたのは、そのときだった。

 私は無言で顔をあげる。

 そこにいたのは、殿下が隠していた女性だった。


 黒髪に、つややかな目。

 保護欲を引き立てるような、幼い表情。

 それを見ながら、私は思う。


 これが俗にいう、男に好かれやすい女という奴なのかもしれない、と。


「アズリアいい。下がっていろ」


 そんな私の思いを裏付けるように、殿下はアズリアを守るようにそう叫ぶ。

 しかし、アズリアは止まらなかった。


「いいえ! 下がりません! 貴女はミラベル様の身分しか見ていない! そんなのだから、婚約破棄なんてされるんです! でも、私は違う」


 アズリア、と呼ばれた彼女は殿下の身体で隠れながら、そう叫ぶ。

 その様子は確かに愛らしく、殿下の気持ちも分からなくもない。

 そう思いながら、私はゆっくりとアズリアに向き直る。


「アズリア、と言ったか」



 ただ、名前を聞いただけなのに、彼女は大げさにおびえて殿下の後ろに引き下がる。

 まるで殿下を肉盾にするかのような勢いだ。


「マリアベル、下がれ」


 そんなアズリアを守るように殿下は私の前に立ちふさがり……。


「……え?」


 その殿下を、私は強引に私の方へと引き寄せた。

 後に残るのは、肉盾がなくなり呆然と佇むアズリア。


 そこにあるのは、先ほどの演技の恐怖ではない、本気の戸惑い。

 それを見て、わずかに私の中で溜飲が下がる。

 やっぱり、勝負は真っ向からでないと気持ちがよくない、と。


「貴様──誰の許可を得て、口を開いている?」


「……っ!」


 次の瞬間、アズリアの顔に浮かんだのは、まるで竜でも前にしたかのような絶望的な恐怖だった。


「ま、マリアベル……」


 私の腕に吊るされた、殿下が何かを口にしようとする。

 しかし、私が殿下を持つ腕をゆるめることはなかった。

 アズリアをにらみながら、私は殿下に告げる。


「ご無礼をどうかお許し下さい」


「ふざけるな貴様! 先ほどから無礼しかしていないだろうが!」


「ありがとうございます」


 話が長くなりそうなので話を打ち切った私は、アズリアをにらみつけながら告げる。


「なあ、アズリアとやら。どうして私の前に出てこれた?」


「な、なにを……」


「お前に私の実力がわからない訳がないだろう?」


 そう言いながら、私はアズリアへの警戒を強める。

 柔らかい容姿に、男好きしそうな態度。


 ……しかし、その見た目に反した異常に高い魔力をアズリアが持っていることに私は気付いていた。


「この私が直々に褒めてやる。なかなか魔力を隠すのがうまい。だが、私は特殊な目をしていてな」


 そう言いながら、私は自身の目に触れる。

 自分の髪と同じ、真紅の瞳を。


「──私の目は魔力の多寡を見抜く魔眼だ」


 魔力が多いほど、その人物の背中に大きな炎が見えるようになる。

 それが私の持っている魔眼の効果。

 その魔眼が物語っていた。


 目の前のアズリアは、人間にしては異常な魔力を持っていると。


「……なにを訳の分からないことを言っている?」


 私の抱えられている殿下が困惑した声を上げる。

 それに私は無言で殿下の身体を締め付ける。


「ぐ……! なにをするマリア、貴様……!」


「危険なので黙っていて下さい」


 そう、それ以外に私に他意はない。

 別に、最早私の名前とセットになっている魔眼について殿下が知らないことに腹を立てた訳じゃない。


「……っ! いいから、私を離せ! 言っておくが、アズリアに手出しすることだけは私が許さないぞ!」


 そう言いながら、殿下は私をにらむ。


 その言葉に、私の心に一瞬迷いができる。

 このままアズリアを手に掛けたら、殿下に誤解されるのではないかと……。


 ーーアズリアが何らかの魔術を使ったのは、そのときだった。


 それは不可避の風の拘束の魔術。

 見えないことを利用し、暗殺に向いている魔術が瞬時に編まれて放たれる。


 その矛先は、殿下だった。


「貴様」


 それを理解した瞬間、私は殿下を庇い、魔術に背中を向ける。

 内心、戦い慣れていると判断しながら。

 同時に雰囲気だけで、分かる。

 アズリアが勝利を確信したように、笑ったことを。


 だが、それは早計だった。

 ──次の瞬間、私の身体から圧倒的な熱が放出された。


「……え?」


 それは時間が無かった為に、魔術とも言えないただの魔力の放出だった。

 本来、魔力にきちんと編まれた魔術と張り合えるだけの力などない。

 このままであれば、殿下の代わりに私が拘束されて話は終わりだっただろう。


 そう、相手が私でなければ。


「嘘、なんで……」


 私の魔力は一瞬でアズリアの魔術を飲み込む。

 ただの魔力が入念に組まれたであろう魔術を。

 次の瞬間、私の魔力が破裂し、爆発音が響く。


「っ! 何だ?」


「マリアベル様が何かしたのか……?」


 とたんに夜会の中、騒ぎがおき一気に騒がしくなる。

 しかし、そんな中アズリアは一切揺るぐことなく私だけを見ていた。

 そう、まるで目を逸らせば全てが終わると言いたげに。


 そしてそれは事実だった。

 今の私の前で目をそらすのは、アズリアにとって自殺行為だろう。

 ただ一つ、勘違いがあった。


「私を、このマリアベルを敵に回したな、貴様」


 ──目を逸らそうが逸らすまいが、そんなこと関係のない実力差が私とアズリアの間にはあった。

「ひっ」


 押し殺した悲鳴がアズリアの口から漏れる。

 それは隠し切れない恐怖の証で、私は内心憮然とする。


 殺気も出していないのに失礼な、と。


 まるで私が悪者のようではないか、そう思いながら私は殿下へと目を落とす。

 これでもまだ私を疑うのか、と言うために。

 そして、魔術の衝撃で意識を失った殿下に気付いたのはそのときだった。


「……どうしてこんな肝心な時に」


 後の説明がやっかいなことになりそうだと。


「まあ、今は目の前のことが最優先か」


 そう思いながら、アズリアへと目をやるとそこに浮かぶのは色濃い恐怖だった。

 まるで今すぐとって食われると言いたげな。


 ……本当に人をなんだと思っているのか。


 そう思いながらも、私は拘束の魔術を編む。

 実のところ、私にはアズリアを害する気はなかった。

 理由は複数ある。


 アズリアは確実に殿下を人質にするような動きをしていたこと。

 少なくとも、現時点では殿下を害した訳ではない。

 拘束して目的を吐かせる必要こそあるが、殿下を暗殺しにきた訳ではない。

 すぐに殺してでも止めるほどの危険度はない。


 など様々な理由はある。

 しかし一番私の頭を支配しているのは一つの予感だった。


 明らかに人間ではない。

 ……具体的に言えば、魔族としての特徴を持つアズリア。

 そして、魔族と言えば私の頭に浮かぶ存在がいた。


 つとめてそれを意識しないようにしながら、私はアズリアに魔術をかける。


「きゃっ!」


 その魔術にアズリアはろくに抵抗もできず捕まる。

 ……アズリアの頭上にあるマークが浮かんできたのはそのときだった。


「やっぱりか、あの魔王……」


 それは帝国の国旗。

 アズリアが魔王たる帝王の部下である証だった。


「そ、そんな……」


「もしかしてあの魔王がこんなところに……!」


 その国旗を見て、夜会は今までと別種の騒がしさに包まれる。


「安心しろ。魔王は今はこない。来ればこの私が分かる!」


 私のその言葉に夜会の中、安堵が広がる。

 それを感じながら、私はアズリアを差し出して告げる。


「この者を魔力封じの牢に入れておけ。陛下には私から報告する」


 正直、今すぐにもアズリアを尋問したい。

 しかし、ここに魔王を呼ぶ訳にはいかないと言う思いからその気持ちを抑える。


 ……そもそも、あの魔王ならなにも考えていない可能性さえある。

 しかし、この事態が起きてそんなことが分かる人間は王国にはいないだろう。


「あの魔王、やっかいなことを……」


 そうつぶやいた私の口には苦々しさが滲んでいた。



◇◇◇




 マリアベルの婚約破棄未遂から数時間後。


「どうして、話が違う……!」


 薄暗い牢獄の中、私の声が響いた。

 その部屋は牢獄と言うにはよくできた作りをしていたが、それに気を払う余裕さえ私にはなかった。


 あるのはただ一つ。


 ……あの女、マリアベルへの怒りだけだった。


「くそくそ、自分の男をとられたはずだろうが! どうしてあんなにも冷静にしている!」


 思い出す。

 ミラベルを誘惑し、夜会という場所でマリアベルに恥をかかせる。

 その目論見は途中まで順調だった。


 何せ、ミラベルは元々婚約破棄を考えており、扱いやすい男だったのだから。


 少し唆せば、ミラベルは言うとおりになった。

 夜会という場所を使うことを最初は躊躇していたが、それも私がそうしないとマリアベルが婚約破棄を認めないと告げると納得した。


 その調略がうまくいかないと感じたのは一体いつからか。


 マリアベルの名誉を落とすために広めた噂が一切広がらなかったことか。

 それとも、その噂を流しているのをミラベルに気づかれた時。


 ……または、ミラベルの心が私に向いていないと知った時か。


 ミラベルは私がマリアベルの名誉を落とそうとすることを許さなかった。


 ──これは私とマリアベルの問題で、婚約破棄は私の責任の元行う。どうしてマリアベルの名誉を傷つける必要がある?


 婚約破棄を行おうとしながら、けれど一切汚い手を使うことを許さないミラベル。

 私がミラベルという人物を間違えていたことに気付いたのはその時だった。


 確かに、ミラベルは馬鹿だ。

 何も考えずに私に従い、誰も取り消せない夜会で婚約破棄することを決めた。

 しかし、ミラベルは誰かの言いなりではない強い自分の意志を持った人間だった。


 ──安心しろ、アズリア。何があっても私がお前を守ってやる。


 もし、紅蓮の魔術師に敵視されれば、この盆暗に守れる訳がない。

 にも関わらず、笑顔で言い放つミラベルに呆れながら、それでも同時に私は気付いていた。


 ──何があっても俺が助けてやる。


 どうしようもなくお人好しで。

 けれど、自分の主と同じ様な強い意志を持つこの王子が、私は嫌いでないことを。


「くそ、くそ……!」


 故に私は許せないのだ。


 ……私に見向きもしない二人の男性の寵愛を受け、私を歯牙にもかけないマリアベルが。


 ──この任務の目的は王国の状況を探ることだけだ。ミラベルの調略はできたらで考えておけよ、アズリア。無理だろうしな。


 王国に向かう前、私に向かって主が告げた言葉が私の頭によみがえる。

 当初、私は意地になってミラベルと落とすと決めていた。

 あの王太子位、簡単に色仕掛けで落とせると。


 あの英明な主でも、間違うことがあると。


 けれど、その私の目論見は儚く潰えた。

 どれほど私が色仕掛けをしようが、寄り添おうがミラベルには意味がなかった。


 ……ミラベルの心は間違いなく、マリアベルの方へと向いていた。

 ミラベルにとって、私はあくまで共犯者でしかなかった。


 ──婚約破棄がしたい訳じゃない。ただ、今のままでは駄目なのだ。


 かつて、婚約破棄の理由を聞いた時にミラベルが告げた言葉。

 それを思い出しながら、私は歯噛みする。


「いつか絶対に吠え面をかかせてやるぞ、紅蓮の魔術師マリアベル」


 ……自分など関係なく、マリアベルは今後苦境に陥る。


 そう知っていてもなお、言わずにはいられなかった負け惜しみは、誰の耳に入ることもなく消えた。

諸々迷った結果、一度短編ベースで投稿させて頂きました!

続きが見たいと思って下さったら、評価や感想をいただけると凄くモチベーションになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ