第八話『神父様のおとぎ話』
教会に着いた。
周りは木々に囲まれているので、方向感覚がないと道に迷ってしまうだろう。
教会の手前には花と作物が植えてあった。
建物は古びており、白い壁面に苔がむし、ツルが伸びていた。
クネヒトたちは馬から降りた。
「おお、ノルンちゃんや」
「神父様、こんにちわ」
「はて、そこにおる若いのわ?」
「ダビデさん、こんにちわ。この子はクネヒト。うちに住まわせているのです」
ペコリ
「おお、そうかそうか」
ダビデ神父はニッコリ笑った。
「頼まれていた。蜂蜜酒です。神父様、どうぞ」
「ありがとう。これを」
神父は持っていた袋の中から銀貨を取り出した。
「いいんですか。こんなに貰っても」
「いいんじゃよ。老いぼれの頼みを聞いてくれたお礼じゃ」
「それと、わざわざ、きてくれたんじゃ。おとぎ話でも聞いていってくれんか」
「神父様のおとぎ話、聞きたいわ。ねっ、クネヒト」
「うん。神父様のお話を聞きたいです」
その言葉を聞いた神父はゆっくりと頷き、杖を片手に教会内に入っていく。
神父のあとを続くように、クネヒトも教会に入る。
♰♰♰
教会に入るとパイプオルガンがあった。
それと長っぴろい、椅子が並べてある。
ノルンとクネヒトはパイプオルガンの近くの椅子に座った。
ウィンターズさんは椅子に座らずに、ノルンの横に立った。
神父は祭壇の前に立った。
「おとぎ話というよりも聖書に近いのじゃが、おっほん。神はエデンの園に人類を誕生させた。その名を―――――――」
!?
神父が話す内容は知っている話だった。
学校で、美術の授業で習ったことのある。
創世記、神話の話だ。
でも、聞いたことがない話だ。
神父は話を続けた。
神によってアダムとイブが創られた。
産まれた落ちた二人はエデンの園で出会った。
アダムとイブは神が管理する園で、禁断の果実を食べて、知恵を得た。
二人は恥ずかしさのあまりイチジクの実で身を隠した。
知恵を得たと同時に『感情』が生まれた。
園にはサタンがいた。サタンは蛇の姿で潜んでいた。
サタンは果実に少しだけ人間が死なない程度に毒を盛っていたのだ。
アダムとイブの誕生以降、人類は進歩した。
それを天から見ていた神々は怒り狂い、他の神々は大いに喜んだ。
時代が進むにつれて、人類は賢くなり、悪魔もまた賢くなった。
次第に人間の欲望は自我を持ち、再び地上に降臨したサタンは人間に自らの血を分け与えた。
人間の欲望は、やがて悪魔の形となり、サタンの血によって生まれた堕ちた悪魔たちは人間を殺していった。
魔術師たちは神々と手を取り合い、『七つの大罪』を滅ぼすため、
『クランプス』を召喚した。
『クランプス』と『一人の従者』は『9人のトナカイ』とともに『七つの大罪』をみごとに打ち滅ぼし、人類を救った。
「神父様のおとぎ話、とても面白かったです!ところでクランプスってなんですか?」
「クランプスは錆びた鎖と鐘を持っておる。そして背中に籠をしょっているのじゃ。籠に悪い子を入れて地獄に送るのじゃよ」
「ちょっと怖いわ」
「はは、そうじゃな。悪い子には罰を!良い子にはプレゼントを!与えるのがクランプスじゃ」
あれ、この話・・・。夢と同じ。
「お父さんが子どもの頃は悪い子をしたらクランプスがやってくるなんて言われていたな」
「え!お父さん、クランプスを知ってるの?」
「知ってるもなにも。昔はクランプス祭なんて行事が村にあったんだよ。悪い子のいうことを聞かせるためにクランプスの変装をした男たちがやってくるんだ。今は若い村の連中がみんな都会に行って、誰もやらなくなったんだ」
「いいなぁ。私、クランプスに会ってみたい」
「ははそうだな」
「「ありがとうございました」」
ペコリと神父にお辞儀をする。
「神父様、私たちはこれで」




