第二話『始まりの晩餐』
とある辺境のホテル―――――――――
コッンー コッンー
ホテル内に足音が響き渡る。
大理石の階段を降りる大男が一人。
右手には大きな包丁を持ち、エプロンを身に着けている。
男の肌は青白く、顔や衣服が血まみれだ。
「ギリヤグイル!ポッタスケフィル!またしても、あなたたちですか!貯蔵庫からミルクやソーセージ(人肉)を盗み食いしたのは、次はないですからねぇ」
「ああ!?放置している方が悪い。食い物は鮮度が命だ。俺たちは親切にも食材が腐らないように食べたまでだぁ」
「「「「「「「「「「「「「いいから早く、飯(人間)を食わせろ!」」」」」」」」」」」」」
13人のトロールは大男に向かって、鋭い牙を剝き出しにし、眼光を鋭く尖らせる。
「ウィップ。どうやら反省がないようですねぇ。いいでしょう。まとめて調理してあげますよ」
ビュン
「おっと」
大男は、その巨体に見合わない動きで、軽やかに動く。
圧縮された空気の砲弾が男の横を横切る。
バッカン!
けたたましい破裂音ともに
階段が砕け散った。
「静かにしていてください。そのデカ尻を月まで蹴り飛ばしますよ~」
ウサギの仮面を被った女は、ニッコリ笑顔で大男に向かって話しかける。
大男は階段を歩き終えた。
「バニーぃ~!ギリギリギリ・・・まぁいいです。今日は特別な晩餐会です」
「さて!お遊びはここまでにして。神々の皆様にプレゼントをご用意しています。さぁ、ご覧ください。悪しきトナカイ、ルドルフとオーディンの配下ブリュンヒルデ~!!!」
男の配下の悪魔たちが舞台の垂れ幕を上げる。
そこには十字架に張り付けられたルドルフとブリュンヒルデがいた。
意識はないようだ。
頭が下に垂れ下がり、頭部からダラダラと血が滴り落ちている。
「ウィップファザー・・・これはどういうつもりなの。私はクラちゃんが欲しい!って言ったのよ。こんな汚れたトナカイとブサイクな女はいらないのだけれど」
「いえいえヘラ様、ご安心してください。この者たちを私、特製の魔法の樽に一晩漬けこむのです。そうすれば、私の操り人形となり、奴の居場所も話すことでしょう」
「わかったわ。でも私の望みが叶わなかったときはわかるでしょうね」
ギリシャ神話の女神であるヘラは美しい美貌と裏腹に恐ろしい顔で男に問いかける。
「ウィップ!もちろんでございます。どのみち奴は、サタン様の天敵となりうる存在、一刻も早く見つけ出し、かならずや、その首をご覧にいれましょう」
バリン!!!
「!!?」
突然、上空からガラスの破片が落ちてくる。
ウィップファザーは天井を見上げる。
そこには、巨大なカラスがいた。
なんとカラスはステンドガラスに乗っかり、大きな嘴でガラスを突き破ったのだ。
満天の星空が丸見えだ。
「可笑しいですねぇ。周りに強力な結界を張っていて、見えないし、壊されないはずなのに・・・こんな芸当ができるのは、オーディンですねぇ!!!」
巨大なカラスは透かさず、
十字架に張り付けられたルドルフとブリュンヒルデのもとへ向かい、
大きなかぎ爪で二人を掴む。
二人を掴んだカラスは上空へと力強く羽ばたく。
「逃がしませんよ~!」
ウィップファザーは左手と右手を重ね合わせ唱える。
「鉄の処女」
オーディンを囲うようにカラスを型取った鉄の人形が現れた。
内側には鋼鉄の棘がみっしり入っている。
「ミンチになってください」
鉄の塊がカラスを鋏こむ。
人形の中から赤い液体が大量にあふれ出した。
トロールたちは頭上に向かって口を大きくあけた。
「ほほ~~~!こりゃ美味い」
!?
トロールの反応を確認したヘラは手の甲に落ちた赤い液体を舐める。
ペロリ
「なにこれ、赤ワインじゃない」
「どうやら逃げられたようですねぇ」
「いいわ。私たちの邪魔をするものは排除するだけよ」




