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第六章 ヴァレンが、間違えた日
「……英雄を、
選別しなかった」
ヴァレンの声が震えた。
「俺は、
見て見ぬふりをした」
街を救った英雄は、
世界を壊す兆しを
すでに見せていた。
それでも、
民衆は彼を讃えた。
「止めれば、
俺が悪者になる」
その恐れが、
判断を遅らせた。
結果、
救われた街の外で、
別の街が滅びた。
「正しかったのは、
剣じゃない」
ヴァレンは言う。
「逃げなかった勇気だ」
レインは初めて、
口を開いた。
「じゃあ今度は、
逃げないのか」
ヴァレンは、
答えなかった。




