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第三章 ギルド長は、嘘を否定しない
ヴァレンは、
逃げなかった。
レインの顔を見ると、
驚きも怒りも見せず、
ただ静かに頷いた。
「来たか」
「俺は死んでない」
「知っている」
即答だった。
レインの拳が震える。
「じゃあ、
なんで――」
「君は、
生きていては
困る存在になった」
ヴァレンの声は、
驚くほど穏やかだった。
「世界にはな、
壊れてはいけない
均衡というものがある」
彼は机の引き出しから、
一冊の黒い帳簿を取り出す。
そこには、
何度も死んだ冒険者の名が
並んでいた。
「生き残る力が強すぎる者は、
いずれ世界を歪める」
「だから、
殺すのか」
「違う」
ヴァレンは首を振る。
「世界から
隠すだけだ」
嘘をついてでも。
レインは理解した。
この男は、
悪人ではない。
だが――
英雄でもない。
「選別してるのか」
ヴァレンは、
肯定も否定もしなかった。
「君は、
もう戻れない」
その言葉が、
レインの人生を
確実に変えた。




