ダイナマイトの論理と、道具の罪
場所:久保編集者のオフィス
律からの挑戦状を受け取った火野がオフィスに駆け込む。
律はホワイトボードの前に立っている。久保は静観。
「あのメールは何だ!俺の感情論を否定したいだけだろう!」
「ええ。あなたの『AI=悪』という感情論を解体します。私は技術の中立性を証明する。」
火野は苛立つ。
「道具は、人間の魂を削る行為を代替する!文化の破壊だ!」
「それは感情論です。ダイナマイトは破壊だけでなく、人類の効率化に貢献した。」
「ノーベルは苦しんだ!その苦悩が道具の罪を証明している!」
「ノーベルの苦悩は、道具の罪ではない。人間の使い方という非効率な感情に向けられたものです。」
「AIが小説を書けば、言葉はただの記号になる!魂の匂いが消えた、無菌室のデータになるんだ!」
「それはあなたが感情的に判断しているだけ。道具は中立。AIは技術を持たない人間に文才を与える中立的な道具です。道具に罪はない。」
火野は論理的に追い詰められる。
「技術の民主化だと?それは、文才を持つ俺の壁を壊したいだけの傲慢だ!」
「今の小説界は、『文才』という名の技術職です。敷居が高すぎる。」
「AIは、才能がないと諦めた人たちの救済こそが役割です。」
「その中に、太宰や芥川になり得る逸材が埋もれているかもしれない。」
「あなた方は、自分の領域が広がることを、破壊されると怖がっているだけです。」
久保は、議論の終わりを見極め、静かに席を立つ。
「(火野に)どうでしたか、火野さん。あなたの熱は、論理という盾の前では、まだ不発の瓦礫にしかならない。」
火野は悔しさに机を叩きつける。
律は、火野のその悔しさが次のエネルギーになると確信し、オフィスを去る。
二人の関係は「論敵」から「互いの能力の必然的な検証者」へと静かに移行していくのだった。




