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魂と演算:AI世代の『物語』論争  作者: 済美 凛


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爆発と論理、編集者久保の評価

Aパート 


火野と律が、互いの匿名IDを突きつけ、一触即発の睨み合いを続けている。火野は律の冷徹な態度に激しい怒りを覚え、律は火野の感情の非効率性に苛立ちを感じていた。

そこへ、彼らの担当編集者である冷静沈着な久保が間に割って入る。


「おや、お二人とも、もうお知り合いですか。ちょうど良かった。自己紹介をしましょう。こちらが、火野誠さん。そして、こちらが、澄堂律さんです。」


久保は、二人の本名を呼び上げる。


「火野誠?……まさか、あの『設計士』が、女……澄堂律だと?」


「澄堂律……非効率な動揺は、この名前から生まれていたデータだったのね。」


互いの本名を知り、匿名IDを介した対立が、生身の人間同士のより深い対立へと変わる。久保は二人をカフェのテラス席へと促す。


Bパート


久保は席に着くと、二人の作品に対する客観的な評価を淡々と述べる。


「彼の作品、『爆弾の詩』は、感情の爆発力は評価できますが、その熱量が全て無秩序な瓦礫となっています。読者は熱に焼かれますが、最後に残るのは混乱です。」

「無秩序?それが魂だ!」


「彼女の作品、『最適化された終末』は、論理構成、世界観の設計において、現行の新人賞作品の平均スコアを圧倒的に凌駕しています。しかし、その論理は冷たい氷で覆われており、読者はその設計図に感心はしても、涙も喜びも感じません。」


「感情という非効率なノイズは、作品の価値を下げます。」


久保は二人の主張を否定せず、ただ作品の「欠陥」が、互いの「最も誇りにしている部分」から生まれていることを指摘する。


Cパート


久保編集者は、二人が口論を始めるのを見ても止めない。むしろ、その衝突こそが、彼らの創造性の源泉だと知っている。


火野は、律の冷たさに「ロボットか?」という言葉を喉元まで出すが、初対面の無礼さを思いとどまり、代わりに怒りをぶつける。


「お前は、小説を効率化の道具としか見ていない!」


「あなたは、自己満足の道具としか見ていない。」 


「俺は命を削っているんだ!そこに魂がある!」


「その『魂』が、なぜ読者を失う非効率でなければならない?」


「データで整えられた無菌室の物語なんて、誰も求めちゃいない!お前のAIなんて、ただの、倫理のないダイナマイトだ!」


「あなたの血と汗の匂いは、構造破綻というデータを弾き出している。それは論理的欠陥です。『ダイナマイト』を使うことしか知らないのは、あなたの方です。」


「文才のないお前が、技術で俺の壁を壊そうとしているだけだ!」


「その『文才』こそ、技術を持たない無数の人間の夢を阻む、暴政です。」


律は、AIの持つ「技術の民主化」の側面を突きつけることで、火野の「魂論」を倫理的な面から攻撃し始める。二人の対立は、単なる執筆スタイルの違いではなく、文学の未来と、技術の倫理を問う、深い論争へと発展していくのだった。


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