表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂と演算:AI世代の『物語』論争  作者: 済美 凛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/28

破壊衝動と設計図の邂逅

Aパート


新人賞の二次選考の一環として設けられた、「編集者・二次選考通過者向け懇親会」の会場。


澄堂律は、清潔感のある黒いスーツを完璧に着こなし、会場に入場する。

彼女は、AIの予測値を超えた熱量を持つ「魂の職人」の存在を意識し、周囲の人物データを分析していた。


律の視線が、会場の隅で不格好なスーツ姿で安物のコーヒーを啜る男性に留まる。


疲れた表情、場違いな服装、そしてそこから発せられる、泥臭いながらも純粋な執筆への熱。


(律の脳内AI: 対象男性(不特定)から発せられる熱量データは高。彼の作品と匿名掲示板の言動から、「魂の職人」と推測される。彼の言動パターンは非効率的であり、鈍感性も予測される。)


律は、この「非効率の塊」が自分の論理の壁を打ち破る可能性を秘めていると確信し、冷静に観察を続ける。


Bパート


火野誠は慣れないスーツに身を包み、会場の隅で周囲に馴染めずにいた。


彼は、論敵である「最適化の設計士」の姿を探しているが、律がすでに自分に気づいていることには全く気づいていない。


「ここにいる誰かが、俺の魂をデータで笑うインテリ野郎か……。絶対、俺から声をかけてやるもんか。」


そのとき、会場の中央付近に立つ、一際目を引く女性に火野の視線が引き寄せられる。


完璧なスーツ姿の女性。火野は、この女性こそが論敵ではないかと警戒する。 


しかし、その洗練されたスーツのラインは、彼女の豊かな胸元を強調していた。

火野は、論敵への警戒心と同時に、一人の男として思わずそこに目がいってしまい、ハッと気づいて慌てて視線を逸らす。


律は、火野の視線が自分に向けられた瞬間を逃さず、その焦点が胸郭の容積にあったことを冷静にデータとして記録する。


律は手に持ったカップからコーヒーを一口飲む。


Cパート


火野と律の視線が、今、改めてぶつかり合う。律は動じないが、火野は恥ずかしさからすぐに目を逸らす。


二人は引き寄せられるように、互いに一歩ずつ歩み寄る。火野はまだ確信できていないが、律の冷たいオーラに警戒を滲ませる。


「……あんた、誰だ?」


律は、相手の問いには答えず、火野の動揺の原因を合理的に分析したデータとして突きつける。彼女は手に持ったカップを傾け、コーヒーを一口飲む。 


「あなたから、徹夜と紙の匂いがします。そして、先ほど私の胸郭の容積に視線を向けた回数は、2.7秒間に3回でした。人間の非合理な動機が、論理で隠しきれない、非効率の象徴ですね。」


火野は顔が真っ赤になる。論敵に、最も人間的な恥ずかしい部分をデータとして分析されるという屈辱!


「な、ち、違う!俺はただ、あんたの完璧な構成を分析していただけだ!スーツの緻密さをな!」


「私のスーツは、『読者の目の動きを自然に誘導する』というマーケティング理論に基づいて選ばれたものです。その誘導に素直に従ったという点で、あなたの『受動的な論理的欠陥』は証明されました。」


その言葉を聞いた瞬間、火野の脳裏に、匿名掲示板のあの冷たい一文がフラッシュバックする。


「そのセリフ……まさか、お前が……!俺は魂の職人だ!お前は?」


「ええ。私は最適化の設計士。初めてお目にかかります、時間の浪費家さん。」


二人は互いの匿名IDを確信した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ