第3話 役職より先に
朝。
事務棟の
小さな
会議室。
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「……正式に」
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「……現場責任者を
任せたい」
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書類が、
机に
置かれる。
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ヒカルは、
一度も
触らない。
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「……条件」
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その一言で、
空気が
止まる。
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「……また
条件か」
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監督が
苦笑する。
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「……役職は
いらない」
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「……権限も
最小で」
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「……代わりに」
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「……仕組みを
作らせて
ほしい」
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男が
眉を
ひそめる。
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「……回りくどい」
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ヒカルは、
静かに
続ける。
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「……誰が
見ても」
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「……判断できる
形」
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「……人が
変わっても
残る」
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「……それが
欲しい」
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沈黙。
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「……効率は
落ちる」
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「……最初は」
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「……でも」
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「……崩れない」
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男は、
椅子に
背を
預ける。
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「……役職が
ないと」
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「……言うこと
聞かない
ぞ」
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ヒカルは、
首を
振る。
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「……聞かせる
ための
役職」
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「……それ」
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「……長持ち
しない」
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監督が、
小さく
笑う。
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「……村と
同じだな」
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「……分かった」
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「……好きに
やれ」
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「……責任は
取る」
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ヒカルは、
初めて
机に
手を
置く。
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「……それで
十分」
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現場。
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紙が
配られる。
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「……これ」
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「……判断表」
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「……迷ったら
見る」
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作業員が
首を
かしげる。
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「……数字
じゃない
な」
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「……土」
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「……音」
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「……匂い」
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ヒカルは、
うなずく。
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「……全部
現場」
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誰かが
言う。
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「……それ」
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「……覚えたら
ヒカル
いらない
な」
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ヒカルは、
少し
笑う。
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「……それが
完成」
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ログ。
「役職を
断った」
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「……代わりに」
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「……残す
ものを
選んだ」
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「……通じない
場所でも」
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「……通じる
形は
作れる」




