第20章 それでも回る日 第1話 ヒカルがいない畑
朝。
ヒカルは、
畑に
いなかった。
⸻
水路の前に
立つのは、
若者。
その隣に、
別の村人。
⸻
「……時間、
そろそろだな」
⸻
「……うん」
⸻
二人は、
水門を見る。
昨日、
決めた
通り。
⸻
「……じゃあ」
⸻
若者が、
手を
伸ばす。
⸻
水が、
流れ出す。
⸻
「……出すぎ
じゃないか?」
⸻
「……いや」
⸻
「……土、
昨日
触った」
⸻
しゃがみ込んで
確認する。
⸻
「……まだ
いける」
⸻
村人は、
少し
驚いた顔で
うなずいた。
⸻
「……本当に
覚えた
な」
⸻
若者は、
小さく
笑う。
⸻
「……教えて
もらいました」
⸻
「……全部
じゃない
ですけど」
⸻
昼前。
畑は、
静かに
動いていた。
⸻
「……ヒカル
呼ばなくて
いいのか?」
⸻
誰かが
言う。
⸻
「……今日は
自分たちで
やる」
⸻
その言葉に、
少し
誇らしさが
混じる。
⸻
だが。
⸻
午後。
空が、
急に
暗くなる。
⸻
「……雲、
早く
ないか?」
⸻
「……予報、
夜から
じゃ」
⸻
風。
⸻
若者が、
空を
見上げる。
⸻
「……嫌な
感じ
です」
⸻
「……水」
⸻
「……どう
する」
⸻
一瞬、
迷い。
⸻
ヒカルは、
いない。
⸻
若者は、
深く
息を吸う。
⸻
「……閉める」
⸻
「……今は
守る」
⸻
水門を
閉じる。
⸻
雨が
落ち始める。
⸻
「……合って
たな」
⸻
村人が
言う。
⸻
だが。
⸻
別の畑から
声が
飛ぶ。
⸻
「……こっち!」
⸻
「……水、
足りて
ない!」
⸻
若者の
顔が
強ばる。
⸻
「……全部
見切れ
ない」
⸻
その時。
⸻
遠くの
道。
ヒカルが、
歩いてくる。
⸻
手は、
出さない。
⸻
ただ、
見ている。
⸻
若者は、
一瞬だけ
ヒカルを見る。
⸻
ヒカルは、
何も
言わない。
⸻
若者は、
走り出した。
⸻
「……分担
しよう!」
⸻
「……俺、
水路!」
⸻
「……そっち、
畑!」
⸻
声が、
飛び交う。
⸻
完璧じゃ
ない。
でも。
⸻
畑は、
止まらなかった。
⸻
夕方。
雨は
止み、
空が
開ける。
⸻
ヒカルは、
畑の
端で
立っている。
⸻
若者が、
近づく。
⸻
「……ヒカルさん」
⸻
「……いなくても」
⸻
「……回りました」
⸻
ヒカルは、
少し
首を
かしげる。
⸻
「……でも?」
⸻
「……全部は
無理
でした」
⸻
ヒカルは、
うなずく。
⸻
「……それで
いい」
⸻
「……完璧
なら」
⸻
「……僕、
いらない」
⸻
ログ。
「今日は」
⸻
「……いなくても
回った」
⸻
「……でも」
⸻
「……完全
じゃない」
⸻
「……だから」
⸻
「……次が
ある」




