第18章 信頼が形になる 第1話 任せてもいい重さ
朝の畑は、
まだ静かだった。
土の匂いと、
少し冷たい空気。
⸻
ヒカルは、
畝の横で
じっと立っている。
⸻
「……ヒカル」
⸻
後ろから
声。
⸻
振り向くと、
村の男が
立っていた。
今まで、
あまり
話したことのない人だ。
⸻
「……ちょっと
頼みがある」
⸻
ヒカルは、
一瞬だけ
考える。
⸻
「……話、
聞く」
⸻
男は、
畑の奥を
指さした。
⸻
「……うちの
若いのが」
⸻
「……水の
管理」
「任されて
るんだが」
⸻
「……正直」
「まだ
不安でな」
⸻
ヒカルは、
すぐに
答えなかった。
⸻
「……教えて
ほしい」
⸻
「……お前に」
⸻
その言葉に、
ヒカルの中で
小さく
何かが
動く。
⸻
「……僕で」
「いい?」
⸻
「……いい」
「だから
来た」
⸻
男は、
そう言った。
⸻
畑。
若者が、
水路の前で
立ち尽くしている。
⸻
「……ヒカルさん」
⸻
声が、
前より
少し
はっきりしている。
⸻
「……やってみた
けど」
⸻
「……自信、
なくて」
⸻
ヒカルは、
水門を見る。
⸻
「……止めた
理由」
⸻
「……教えて」
⸻
「……昨日」
「水、
多すぎて」
⸻
「……だから
今日は
少なめに」
⸻
ヒカルは、
うなずく。
⸻
「……判断」
「間違って
ない」
⸻
「……でも」
⸻
ヒカルは、
若者の手元を
指す。
⸻
「……確認
一個
足りない」
⸻
「……土」
「触った?」
⸻
若者は、
はっとして
土に
手を入れる。
⸻
「……冷たい
です」
⸻
「……中は
まだ
湿ってる」
⸻
「……なら」
⸻
「……今は
待つ」
⸻
若者は、
ゆっくり
うなずいた。
⸻
「……はい」
⸻
少し離れた場所で、
村の男が
その様子を
見ている。
⸻
「……叱らない
んだな」
⸻
ヒカルは、
小さく
首を振る。
⸻
「……任せる」
⸻
「……だから
見る」
⸻
「……全部
代わると」
⸻
「……育たない」
⸻
男は、
しばらく
黙ってから
言った。
⸻
「……その
距離」
⸻
「……ちょうど
いいな」
⸻
ヒカルは、
何も
言わなかった。
⸻
ただ、
畑を見る。
⸻
若者が、
自分で
水門から
手を離すのを。
⸻
ログ。
「任せる」
⸻
「それは」
⸻
「全部
背負う
ことじゃない」
⸻
「……一緒に
立って」
⸻
「……離す
瞬間を
待つ」




