第3話 叱らなかった理由
夜。
納屋の灯りは、
まだ消えていなかった。
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若者は、
一人で
道具を拭いている。
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「……ヒカルさん」
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声が、
小さい。
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ヒカルは、
振り向く。
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「……どうした」
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「……あの」
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若者は、
少し迷ってから
言った。
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「……なんで」
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「……叱らなかった
んですか」
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ヒカルは、
少し考える。
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「……叱る理由」
「あった?」
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「……あります」
「自分」
「勝手に
判断して」
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「畑」
「ダメに
して」
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ヒカルは、
工具箱を閉じた。
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「……うん」
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「……それ」
「もう」
「分かってる」
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「……叱ると」
「分からせる
ため」
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「でも」
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「……君」
「もう」
「分かってる」
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若者の手が、
止まる。
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「……叱ると」
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「……守りたく
なる」
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「……正しさ
より」
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「……自分を」
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ヒカルは、
ゆっくり言う。
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「……それ」
「一番」
「危ない」
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若者は、
黙って聞いている。
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「……失敗は」
「逃げ場、
作ると」
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「……次も
隠す」
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「……だから」
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「……逃げない
場所」
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「……一緒に
立つ」
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風が、
納屋を
抜ける。
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「……ヒカルさん」
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「……自分」
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「……怖かった
です」
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「……叱られる
より」
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「……見捨てられる
方が」
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ヒカルは、
一瞬だけ
目を伏せる。
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「……僕も」
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「……同じ」
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「……だから」
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ヒカルは、
まっすぐ
見る。
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「……君は」
「もう」
「農家だ」
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「……失敗
含めて」
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若者は、
深く
頭を下げた。
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「……はい」
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翌朝。
畑。
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村の大人が、
様子を
見に来る。
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「……あの若いの」
「大丈夫か?」
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ヒカルは、
うなずく。
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「……任せてる」
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「……失敗した
後の方が」
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「……人は
育つ」
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村人は、
しばらく
畑を見てから
言った。
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「……お前」
「変わったな」
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ヒカルは、
少しだけ
首をかしげる。
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「……教えられた」
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誰に、
とは言わなかった。
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ログ。
「叱らなかった」
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「理由は」
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「信じたから」
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「……任せる
って」
「放す
じゃない」
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「……隣に
立つ」




