第17章 任せた、その先で 第1話 一人でやってみます
朝。
畑に出ると、
若者はすでに来ていた。
ヒカルより、
少し早い。
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「……早い」
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「はい」
若者は、
少しだけ緊張した顔で
言った。
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「今日は」
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一拍。
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「一人で、
やってみます」
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ヒカルは、
すぐに返事が
できなかった。
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「……全部?」
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「はい」
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胸の奥に、
小さな違和感。
昨日の雲。
夜の湿気。
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「……天気」
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「見ました」
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「……水」
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「考えました」
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言葉は、
ちゃんとしている。
ちゃんと、
学んだ顔。
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「……分かった」
ヒカルは、
うなずいた。
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「……僕」
「近く、
いる」
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「はい」
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作業が始まる。
若者は、
一つ一つ
確認しながら
進めていく。
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ヒカルは、
少し離れた場所で
見ていた。
手を出さない。
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昼前。
雲が、
予想より
早く動く。
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「……?」
ヒカルは、
空を見る。
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風。
湿った匂い。
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「……少し、
早い」
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若者は、
気づいていない。
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ヒカルは、
一歩、
踏み出しかける。
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――でも。
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「……任せた」
自分に、
言い聞かせる。
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昼。
雨が、
落ち始める。
予報より、
早い。
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「……あ」
若者が、
空を見る。
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水路。
すでに、
水が多い。
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ヒカルは、
走った。
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「……止める!」
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二人で、
水を切る。
でも、
間に合わない。
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何列かの苗が、
水に沈んだ。
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雨が、
強くなる。
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若者は、
立ち尽くした。
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「……すみません」
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声が、
震えている。
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ヒカルは、
苗を見る。
胸が、
重い。
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「……今日は」
「ここまで」
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それだけ、
言った。
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作業を、
終える。
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誰も、
責めなかった。
でも、
空気は重い。
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夜。
ログ。
「今日は、
任せた」
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「……間に合わなかった」
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「止めるべき
だった?」
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「でも」
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「止めたら」
「任せた意味が
なくなる」
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「……教えるって」
「難しい」
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「明日」
「どう、
向き合うか」




