第3話 それでも、隣に立つ
朝。
畑に出ると、
昨日倒れていた苗が
まっすぐ立っていた。
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「……生きてる」
ヒカルが、
小さく言う。
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若者が、
ほっと息を吐いた。
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「よかった……」
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「……うん」
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そこへ、
村の人たちが
集まってくる。
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「昨日の苗、
どうなった?」
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ヒカルは、
隠さなかった。
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「……倒れた」
「僕が、
教えた」
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空気が、
一瞬止まる。
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「でも」
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「……直した」
「一緒に」
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誰かが、
苗を見る。
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「……問題なさそうだな」
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「全部じゃ
ないけどな」
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「それで
いい」
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その言葉に、
ヒカルは
少し驚く。
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「……いい?」
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「ああ」
「最初から
完璧なやつなんて
いない」
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「教えるなら、
なおさらだ」
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若者が、
小さく頭を下げる。
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「……自分」
「ヒカルさんが
前に立つと
思ってました」
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「でも」
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「隣に
いました」
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ヒカルは、
少し考えてから
言う。
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「……前、
怖い」
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「上も、
怖い」
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「隣なら」
「……逃げない」
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若者は、
笑った。
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「それ、
分かりやすいです」
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作業が始まる。
今日は、
ヒカルは
指示を出さない。
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「……どう
思う?」
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そう、
聞くだけ。
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「……水、
少なめ?」
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「……いい」
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言葉は、
短い。
でも、
ちゃんと
返る。
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遠くで、
子どもたちが
見ている。
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「ヒカル、
先生じゃないね」
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「うん」
「……一緒の人」
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夕方。
畑は、
昨日より
整っていた。
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ログ。
「今日は、
前に立たなかった」
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「上にも、
ならなかった」
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「……でも」
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「誰も
置いていかなかった」
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「教えるって」
「引っ張る
ことじゃない」
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「……隣に
立つこと」
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「それなら」
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「僕にも
できる」




