第2話 失敗は伝染する
失敗は伝染する**
朝。
畑に出ると、
昨日より空が低かった。
雲が、
ゆっくり動いている。
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「……今日は」
ヒカルは、
水路を見る。
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「少し、
様子」
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昨日来た若者が、
うなずく。
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「はい」
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作業は、
順調に始まった。
……最初は。
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「……あっ」
若者の声。
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苗が、
一列だけ
倒れている。
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「……踏んだ?」
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「す、すみません!」
「昨日、
ここって――」
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ヒカルの思考が、
止まる。
昨日、
自分が言った。
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「……ここ」
「大丈夫」
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そう、
言った。
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「……僕」
喉が、
詰まる。
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「……僕が、
言った」
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若者は、
慌てて首を振る。
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「いえ!」
「自分が――」
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「……違う」
ヒカルは、
静かに言う。
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「一緒」
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周囲に、
人が集まってくる。
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「どうした?」
「苗が
倒れてるな」
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視線が、
ヒカルに集まる。
昨日までとは、
違う。
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「……ヒカルが
教えたんだろ?」
誰かが、
ぽつりと言う。
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胸が、
ぎゅっとする。
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「……はい」
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正直に、
答えた。
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「……僕の、
判断」
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沈黙。
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「直るか?」
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ヒカルは、
しゃがみ込む。
土を触る。
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「……今なら」
「水、
少し」
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「根、
まだ生きてる」
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「……直します」
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言葉に、
迷いはなかった。
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若者も、
隣にしゃがむ。
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「……自分も、
やります」
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「……うん」
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二人で、
苗を起こす。
土を寄せる。
水を、
ほんの少し。
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時間が、
過ぎる。
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「……大丈夫そうだな」
村の誰かが、
言った。
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「全部じゃ
ないけど」
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「……はい」
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作業が終わる。
若者が、
頭を下げる。
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「……すみません」
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ヒカルは、
首を振る。
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「……僕も」
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「……教えるって」
「言うだけじゃ
ない」
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「結果も、
来る」
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若者は、
少し考えてから
言った。
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「……でも」
「一緒に
直してくれました」
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その言葉で、
胸の奥が
少しだけ
ほどけた。
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夜。
ログ。
「今日は、
失敗した」
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「教えた失敗は」
「……僕だけの
ものじゃない」
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「それが、
怖い」
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「でも」
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「逃げたら」
「次は、
もっと
怖くなる」
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「……だから」
「明日も」
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「一緒に、
立つ」




