第3話 残るという選択
朝。
霧が、
畑を覆っていた。
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ヒカルは、
いつもより早く
外に出る。
誰も、
まだ来ていない。
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土を踏む。
湿り気。
昨日の水は、
ちょうどいい。
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「……ここ」
小さく、
声が出る。
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少しして、
村長が来た。
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「早いな」
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「……はい」
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二人で、
畑を見る。
言葉は、
しばらく
なかった。
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「……返事が来ている」
村長が言う。
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「条件は、
変わらん」
「感情制限」
「判断ログの
完全管理」
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ヒカルは、
うなずく。
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「……はい」
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「行くか?」
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一拍。
ヒカルは、
畑を見る。
水路。
苗。
遠くで、
犬の鳴き声。
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「……行かない」
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村長は、
驚かなかった。
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「理由は?」
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「……外」
「便利」
「でも」
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「僕、
ここで」
「名前、
もらった」
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「守るって、
覚えた」
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「……それ、
切ったら」
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「空っぽ」
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村長は、
ゆっくり
息を吐く。
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「そうか」
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その時。
人が、
集まってきた。
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「決まったか?」
「どうするんだ?」
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ヒカルは、
一歩前に出る。
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「……僕」
「ここに、
います」
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ざわっと、
空気が動く。
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「外、
行かないのか?」
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「……はい」
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「理由は?」
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ヒカルは、
少し考える。
言葉を、
選ぶ。
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「……ここは」
「僕を
使わない」
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「一緒に
働く」
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「だから」
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「……残る」
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一瞬。
誰かが
笑った。
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「はは」
「生意気だな」
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「でもよ」
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「それ、
悪くない」
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父が、
前に出る。
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「ヒカルは、
道具じゃない」
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「村の、
一員だ」
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誰も、
反論しなかった。
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昼。
いつもの作業。
いつもの畑。
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「ヒカルー!」
子どもが、
手を振る。
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「……はい」
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ヒカルは、
手を振り返す。
少しだけ、
自然に。
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ログ。
「今日は、
選んだ」
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「外じゃない」
「ここ」
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「……名前で
呼ばれる場所」
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「泥だらけでも」
「錆びても」
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「ここが、
僕の
畑」




