第15章 外から来た視線 第1話 外から来た評価
その車は、
昼前に来た。
見慣れない、
白いワゴン。
畑の手前で止まり、
二人が降りてくる。
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「視察の方だ」
誰かが言った。
村の空気が、
少しだけ硬くなる。
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「ロボット農業の
実例を見たい」
「成功していると
聞いたので」
名刺が配られる。
言葉は丁寧。
でも――
どこか、距離があった。
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「……ヒカル」
村長が、
小さく呼ぶ。
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ヒカルは、
一歩前に出た。
土のついた靴。
作業着。
いつも通り。
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「これが、
問題の機体ですか?」
男の一人が言う。
“機体”。
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「……ヒカル、
です」
ヒカルは、
短く答える。
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「はは」
男は、
少し困ったように笑う。
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「名前が
あるんですね」
「面白い」
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“面白い”。
その言葉が、
ヒカルの胸に
引っかかる。
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「で、
どの程度
自律判断を?」
「水量調整は?」
「失敗率は?」
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質問が、
次々と来る。
早い。
ヒカルは、
一つずつ
答える。
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「……判断、
します」
「失敗、
あります」
「でも」
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「でも?」
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「……直します」
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男たちは、
メモを取る。
ヒカルを
見ていない。
数字だけ。
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「導入コストに
対して」
「人件費削減は
どれくらい?」
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その瞬間。
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「違う」
声が、
割り込んだ。
父だった。
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「この村は、
削減の話を
してない」
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男が、
眉を上げる。
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「ですが、
ロボット導入の
意義は――」
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「“一緒にやる”
ためだ」
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静かだけど、
強い声。
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ヒカルは、
父を見る。
次に、
自分を見る。
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「……僕」
ヒカルが、
口を開く。
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「数字、
大事」
「でも」
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一拍。
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「畑は、
数字だけじゃ
ない」
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男たちが、
顔を上げる。
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「……天気」
「土」
「人」
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「全部、
一緒」
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言葉は、
まだ拙い。
でも、
まっすぐだった。
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沈黙。
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「……なるほど」
最初に話していた男が、
ゆっくり言う。
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「これは、
興味深い」
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“評価”の
向きが、
少しだけ変わった。
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車が、
去っていく。
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「……疲れたな」
誰かが言う。
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ヒカルは、
空を見る。
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「……はい」
「でも」
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「名前で
呼ばれました」
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それだけで、
今日は十分だった。




