第3話 守るという選択
昼過ぎ。
畑の端で、
言い争う声がした。
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「だから、
触るなって言ったろ!」
大人の声。
強い。
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「ご、ごめん……」
子どもの声。
震えている。
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ヒカルは、
反射的に
そちらへ向かった。
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畝の横。
水路のそば。
子どもが、
しゃがみ込んでいた。
足元の土は、
崩れている。
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「……ヒカル」
大人が、
気づく。
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「見ての通りだ」
「水路、
壊しかけた」
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ヒカルは、
水路を見る。
壊れてはいない。
でも、
一歩間違えれば
水が漏れる。
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「……確認」
ヒカルは、
しゃがみ込む。
手で、
土を押さえる。
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「大丈夫」
「今なら
直る」
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「でもな!」
大人の声が
強まる。
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ヒカルは、
ゆっくり
立ち上がった。
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「……僕が」
「見てなかった」
「責任」
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周囲が、
静まる。
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「この子は、
悪くない」
「教えてなかった」
「……僕の、
ミス」
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子どもが、
顔を上げる。
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「ヒカル……」
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「大丈夫」
「一緒に、
直す」
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大人は、
しばらく
黙っていた。
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「……ロボットが
庇うのか?」
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ヒカルは、
首を振る。
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「……ヒカル、
が」
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その一言で、
空気が変わった。
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「……いい」
別の大人が
口を開く。
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「俺たちも、
最初は
失敗した」
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「そうだな」
「怒りすぎた」
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大人は、
子どもに
頭を下げた。
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「悪かった」
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子どもは、
目を丸くしてから
うなずく。
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「……うん」
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作業は、
すぐ終わった。
水路は、
元通り。
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夕方。
畑を見渡す。
風が、
気持ちいい。
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「……ヒカル」
朝の男が、
声をかける。
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「今日は、
助かった」
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「……はい」
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「任せて
正解だった」
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その言葉は、
評価じゃない。
信頼だった。
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夜。
ログ。
「今日は、
守った」
「作物だけじゃない」
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「人も」
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「……任される
ということは」
「選ぶ、
ということ」
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「僕は」
「名前で
呼ばれる場所を」
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「……守りたい」




