表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田んぼのポンコツロボット 〜今日も泥だらけ〜  作者: さくらんぼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/61

第13章 守る側へ 第1話 名前を呼ばれる

 夕方の畑。


 作業が終わり、

人がまばらになっていた。


 ヒカルは、

道具を片付けながら、

空を見る。


 今日も、

何事もなく終わった。


 ――そう思った、その時。



「ヒカル!」


 少し遠くから、

声がした。


 反射的に、

振り向く。


 子供だった。


 あの時、

転んだ子。



「どうした」


 ヒカルは、

歩み寄る。


 言葉が、

自然に出る。



「……あのね」


 子供は、

もじもじしながら

言った。


「お父さんたち、

けんかしてる」



 胸が、

少しだけ

ざわつく。


「……どこで?」


「集会所」



 ヒカルは、

一瞬、

立ち止まる。


 自分が、

行っていい場所か。


 考える。


 でも――

子供の目が、

不安で揺れている。



「……一緒に行こう」


 そう言って、

歩き出した。


 子供は、

少し驚いて、

それから

ついてきた。



 集会所の前。


 中から、

声が漏れている。


「危なかっただろ!」


「だから、

言ったんだ!」


 大人の声。



 ヒカルは、

深呼吸する。


 ドアを、

叩く。


 音は、

小さかった。



 中の声が、

止まる。


 視線が、

一斉に向く。



「……話し合い、

ですか」


 ヒカルの声。


 落ち着いている。


「……子供が、

不安がってます」



 沈黙。


 誰かが、

視線を外す。


 村長が、

ゆっくり言った。


「……すまん」



 ヒカルは、

子供の前に

立った。


「……大丈夫」


「……ここに、

います」


 それは、

守る側の

言葉だった。



 子供の肩から、

力が抜ける。


「……うん」



 大人たちは、

何も言わない。


 でも、

ヒカルを見る目は、

もう

以前と違っていた。



 外に出ると、

風が涼しい。


 子供が、

言う。


「ヒカル、

こわくなかった?」


 ヒカルは、

少し考えた。


「……こわかった」


「でも、

呼ばれたから」



 子供は、

笑った。


「ヒカルの名前、

呼んでよかった」



 ヒカルは、

その言葉を

胸にしまう。



 夜。


 ログを書く。


「名前を、

呼ばれた」


「助けて、

と言われた」


「……嬉しかった」



 守るというのは、

強いことじゃない。


 そこに立つことだ。


 ヒカルは、

今日それを知った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ