第3話 父の本音。ヒカル、家族に一歩近づく
水やり大事件の翌日。
ヒカルはまだ胸のライトの点滅が少し不安定で、ゆうたは朝からずっと付き添っていた。
『ゆうた……ヒカル……ダイジョブ……デス。
チョット……サビてる……ダケ……』
「“ちょっと”で済んでないんだよ……ヒカル」
ヒカルの頭の一部には乾燥剤パックが貼られ、
おじいちゃんがパーツを外して内部を乾燥させている。
「まあまあ、命に別状はないからな」
『ヒカル……命……アッタ……デス……?』
「比喩だよ比喩!」
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■父の視線は冷たくて、少し寂しい
修理の様子を、少し離れた場所から見ている人がいた。
――お父さんだ。
腕を組み、眉間にしわを寄せ、
ヒカルのほうを見る目は、どこか刺さるように鋭い。
「……昨日の事故。やっぱり危なかったじゃないか」
「でも! ヒカルはがんばったよ!」
「がんばったからどうした。壊れたら終わりだろ。
あんな無茶な設計のロボット、農家で使えるわけがない」
ゆうたはぐっと唇を噛んだ。
「お父さん……ヒカルは“無茶”じゃなくて……“努力”してるんだよ」
『ゆうた……フォロー……ウレシ……デス……』
お父さんはため息をついた。
「ロボットなんて信用できないんだよ」
「どうして……? ヒカルは悪いことしてないのに!」
「悪いとかじゃない。……俺は昔、機械にひどい目に遭わされたんだ」
「ひどい目?」
「農機具の自動制御だ。暴走して、畑もみんなの仕事も台無しになった。
機械は裏切らない、そう言われて買ったのに……結局、裏切った」
ゆうたは驚いた。
お父さんがそんな経験をしていたなんて知らなかった。
『……トウサン……ワタシ……裏切ら……ナイ……デス……』
「お前に言ってるんじゃない」
お父さんは視線をそらす。
「だけど……ゆうた。
ロボットを信じすぎると、痛い目を見る。
それが嫌なんだよ」
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■ヒカルの一歩
その言葉を聞いたヒカルが、カタカタと身体を震わせながら立ち上がった。
『トウサン……ヒカル……
トウサン……痛い目……させナイ……デス……』
「……」
『ヒカル……ゆうたヲ……守ル……デス。
畑……モ……守ル……デス。
裏切ら……ナイ……デス……』
ゆうたが涙ぐむ。
「ヒカル……」
お父さんはしばらく黙ってヒカルを見つめ――
深く、深く息を吐いた。
「……そんなこと、言うのか。お前は」
『言いマス……デス』
「……ふん。
せいぜい、ゆうたの役に立ってみろ」
ただの突き放しではなかった。
その声は、昨日より少しだけ柔らかい。
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■ゆうたの胸に灯るもの
お父さんが家の中へ戻っていく背中を見送り、
ゆうたはヒカルの手をそっと握った。
「ヒカル……ありがとう」
『ゆうた……笑ッタ……デス
ヒカル……ウレシイ……デス……』
その胸のライトは、昨日よりずっと明るく光っていた。




