第3話 任せる理由
翌朝。
空は、
昨日よりも
低かった。
集会所の前に、
数人の大人が集まっている。
ヒカルは、
少し離れた場所で
立ち止まった。
「……呼ばれて、
ないですよね」
独り言のような声。
すると、
村長が手を上げた。
「ヒカル。
来てくれ」
⸻
中は、
静かだった。
昨日の作業の話が、
すでに回っている。
「溝は、
全部は終わらなかった」
村長が言う。
「だが、
水は守れた」
誰も、
否定しない。
⸻
「問題はな」
年配の男が、
口を開く。
「次だ」
視線が、
ヒカルに向く。
⸻
村長が、
地図を広げた。
「裏の畑だ。
人手が足りない」
「明後日までに、
整えたい」
ヒカルは、
地図を見る。
少し、
考える。
「……一人では、
無理です」
はっきりした声。
⸻
空気が、
少し動く。
「……正直だな」
誰かが、
小さく笑った。
村長は、
うなずく。
「それでいい」
「誰とやる?」
⸻
ヒカルは、
一瞬、
言葉に詰まる。
そして――
「……皆さんと」
その言葉に、
場が静まった。
⸻
年配の男が、
腕を組む。
「ロボットに、
指示されるのは
嫌だな」
ヒカルは、
首を振る。
「……指示、
しません」
「できることを、
します」
「……できないことは、
頼みます」
⸻
しばらくして。
「……それなら」
別の男が言う。
「やってみてもいい」
一人、
また一人。
うなずきが、
増える。
⸻
村長が、
決めた。
「裏の畑は、
ヒカル中心で動く」
「全責任を
負わせるわけじゃない」
「だが、
一緒にやる」
⸻
ヒカルは、
深く頭を下げた。
「……お願いします」
その声は、
もう、
かなり人間だった。
⸻
外に出ると、
父が立っていた。
「聞いてた」
「……大丈夫か」
「……怖いです」
正直な言葉。
「でも、
一人じゃない」
父は、
少しだけ
笑った。
「それでいい」
⸻
畑へ向かう道。
ヒカルの後ろに、
人の足音が重なる。
一つじゃない。
⸻
信頼とは、
完璧を求めることじゃない。
逃げず、
隠さず、
向き合うこと。
それを、
村は見ていた。




